【フランクフルト=林英樹】創業以来初めてドイツ国内の工場閉鎖を検討しているフォルクスワーゲン(VW)に対し、同社の労働組合は20日、リストラ回避の対案を示した。同国内の賃上げを一時保留して15億ユーロ(約2500億円)相当の支出を抑える代わりに、工場閉鎖や人員削減を行わないよう求めた。
対案では独国内で働く従業員12万5000人への賃上げ要求は取り下げなかったが、引き上げ分は基金として管理するよう提案し、業績が回復するまで支払いに猶予を持たせた。経営陣には工場閉鎖や人員削減でなく、労働時間の短縮などでコストを削減するよう求めた。
VW経営陣は欧州における電気自動車(EV)の販売不振を受け、2026年までに100億ユーロのコスト削減が必要と主張している。労使の隔たりは大きく、今回の対案で妥結する可能性は低い。
VW経営陣と同社の従業員らを代表する独最大の産業別労働組合IGメタルは21日、本社がある独北部ウォルフスブルクで3回目の労使交渉を行う。決裂すればストライキを行使しないと労使で合意した期限である11月末までに妥結できなくなり、労組は18年以来となる大規模ストに踏み切ることになる。
IGメタルの交渉責任者、トルステン・グレーガー氏は20日に開いたメディア向け説明会で「VWの問題は従業員が引き起こしたわけではないが、貢献する用意がある。早期妥結に向け、合理的な限界に挑戦している」と語った。
これまでにVW経営陣は独国内の少なくとも3工場の閉鎖と数万人規模の従業員の削減、月給の10%減などを柱としたリストラ策を公表していた。
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