スタートアップや家業の高度化に挑む「アトツギ」が事業モデルを競う「NIKKEI THE PITCH グロース」の北海道ブロック大会が18日開かれた。登壇した4社は、医療福祉や環境などの分野で成長が期待できるビジネスモデルや独創的なアイデアをアピールした。
登壇した4社は、書籍などのレコメンドツールを手掛けるEZOVATION(札幌市)、緑化資材を手掛ける環境技建(同)、仮想現実(VR)などの企画制作を担うキシブル(同)、ホテル宿泊型の産後ケアサービスのCocokara(同)。
審査員は、北海道大学スタートアップ創出本部の椎名希美特任准教授、システム開発を手掛けるエコモット(同)の入沢拓也代表、道内でホテル事業を展開する鶴雅ホールディングス(HD、北海道釧路市)の大西希副社長が担当した。
キシブルは主に医療現場で、実習などでの教育コンテンツにVR技術を使っている。岸敬介代表は「タスクシフト(医師業務の一部を他の医療従事者に移譲すること)には、技術の力を使うことが必要だ」と訴えた。審査員の椎名氏は診療放射線技師の資格を持っており「こうしたVRツールを使った教育機会があるのは望ましい」と評価した。
審査員からはどのような医療分野でニーズがあるか質問があった。岸代表は「当初は集中治療室(ICU)や看護師教育から始まったが、災害医療の現場でも重要な役割が果たせる」と応じた。大西氏は、ホテル業界で外国人従業員の教育が課題になっているとして「観光などサービス業界にも転用できないか」と提案。岸代表は「事前に教育すれば現場で即戦力になる」と強調した。
ホテルに生後7カ月未満の乳児を24時間預けることができるというサービスを展開するのはCocokaraだ。助産師が常駐し、親からの育児相談も受け付ける。料金は2泊3日で9万9000円から。子どもだけでなく、追加料金なしで親も宿泊することができる。同社は京王プラザホテル札幌(札幌市)と提携している。
産後直後は夜間の授乳などで睡眠時間が短くなりがちで、母親は体力的、精神的に負担が重くなる。周囲に相談できずに苦しむ人もいる。産後うつを経験した高橋奈美代表が、自身の経験をもとに起業した。
審査員の入沢氏は「男性の育児休業制度は導入が増えているが、配偶者の手当までできているところはそう多くはないのでは」と、企業の福利厚生での活用に期待を寄せた。大西氏も「ホテルとして社会課題に力となれることがあるのはうれしいこと」と関心を示した。
EZOVATIONは、電子商取引(EC)サイトでの商品選びを自社サービスの利用でより自らの好みに合った選択ができると訴えた。「Findoppel」というサービスは自らの趣味や好みの傾向に基づいたレコメンド機能をもつ。環境技建は、海藻の生育を助ける資材の活用ビジネスを紹介した。
NIKKEI THE PITCH グロースは日本経済新聞社が主催し、北海道新聞社が共催した。大会を通過した起業家らは2025年3月の決勝大会に出場する。決勝でグランプリになった企業は賞金100万円を獲得し、海外でスタートアップの取り組みを視察するツアーに招待される。
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