閉店してシャッターが閉まると詰めかけた人たちから拍手や「ありがとう」という声があがった=2024年11月24日午後7時、春日部市中央1のイトーヨーカドー春日部店で萩原佳孝撮影

 埼玉県春日部市のイトーヨーカドー春日部店(同市中央1)が24日閉店し、半世紀あまりの歴史に幕を下ろした。人気アニメ「クレヨンしんちゃん」に登場する「サトーココノカドー」のモデルとして知られ、最後の1日は、別れを惜しむ地元住民に、国内外のしんちゃんファンらも加わって終日にぎわった。

 この日は午前10時の開店前から、買い物客らで店舗の外周を半周するほどの長い行列ができた。

 3歳と5歳の子どもを抱いた30代の夫婦は、三重県から5時間以上車を走らせ、午前7時半に先頭に並んだ。「子どもたちがしんちゃん大好きなので、最後にどうしても来たかった」。店内の特設コーナーに直行し、笑顔で記念撮影をしたり、しんちゃんグッズを買い込んだりしていた。

 台湾から来たという男性(29)は「日本のアニメが好きなので、なくなるのは本当にさびしい」と話した。

 店舗5階に設けられた専用ボードには「思い出がいっぱい」「ありがとう」など利用客のメッセージが多数張られていた。月1回買い物に来ていたという市内の70代の女性は「涙が出るほど残念です」と話した。

 同店は1972年に春日部駅西口に開店し、96年に近くの現在地に移転した。地下1階地上5階建てで、食料品や衣料、雑貨などを扱う大型総合スーパーとして買い物客を集めたが、イトーヨーカドーの首都圏店舗再編に伴って閉店が決まった。

 店内には、埼玉ゆかりのアニメ作品などを紹介する県の「アニメだ!埼玉発信スタジオ」が設けられ、国内外から熱心なファンが訪れる観光スポットにもなっていた。

 閉店に伴ってスタジオも閉鎖されるため、春日部市は、展示されているしんちゃん像などを市内に残すよう、県に要望している。

 市によると、閉店後の跡地利用については同店側から情報を得られていない。「人の流れが変わり、近隣店舗への影響も避けられない」として商店街などと対策を検討していくほか、雇用継続が難しい従業員に対しては「職業安定所と連携して支援を図る」としている。【萩原佳孝】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。