イトーヨーカ堂の店舗=東京都内で2024年5月22日、加藤結花撮影

 セブン&アイ・ホールディングス(HD)は、傘下のイトーヨーカ堂などのスーパー事業を束ねる中間持ち株会社「ヨークHD」の株式売却先の選定を進めている。セブン&アイは2026年2月までに保有株の半数以上を売却し、グループから切り離す考え。28日に1次入札を締め切り、今後は応募企業の中から売却先を検討するとみられる。

 入札企業は公表されていないが、住友商事や昨年9月にセブン&アイから「そごう・西武」を買収したフォートレス・インベストメント・グループ、ベインキャピタルやコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)といった米国の有力投資ファンドが興味を示しているとされる。

 住友商事は首都圏で約120店舗の食品スーパーを運営する「サミット」や首都圏で約250店舗のドラッグストアを運営する「トモズ」を傘下に持つ。

 ヨークHDは祖業のヨーカ堂のほか、スーパーの「ヨークベニマル」、ベビー用品の「赤ちゃん本舗」、雑貨店の「ロフト」、外食の「デニーズ」運営会社など計31社を束ねている。住商は傘下企業とヨークHDの相乗効果を見込んでいるようだ。

 また、不動産に強みを持つフォートレスは、そごう・西武を買収した際も、百貨店事業よりも旗艦店の不動産活用に商機を見いだした。ヨーカ堂などは関東の駅前好立地を中心に出店しており、不動産価値に着目したとみられる。

 セブン&アイは8月にカナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタールから買収提案を受けたと公表した。買収に対抗するには企業価値の向上が急務で、10月には不振が続いていたスーパー事業などを束ねるヨークHDを設立。過半の株式を売却し、早期の新規株式公開(IPO)を目指す方針を明らかにした。コンビニ事業に集中し、買収を回避する狙いがあるとみられる。

 また、買収提案に対抗するため、セブン&アイ創業家などが自社買収(MBO)も検討。買収には7兆円を超える資金が必要になるとされ、創業家のほか、傘下に業界2位のファミリーマートを持つ伊藤忠商事の出資や国内メガバンクの融資などが想定されている。

 実現すれば業界再編につながる可能性があるものの、国内1位と2位の協業による独禁法上の問題や、巨額資金の調達方法について懸念が指摘されている。【加藤結花、道永竜命】

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