化粧品大手の資生堂は、中国国内や国内外の免税店での販売の低迷を受け、2024年1月から9月までのグループ全体の決算で最終利益が前年の同じ時期より96%あまり減少するなど、業績が悪化しています。

こうした中、藤原憲太郎社長は都内で記者会見を開き、今後2年間に取り組む構造改革の内容を発表しました。

それによりますと、今後、世界全体で採用の抑制などを図ることで人件費の削減を進めるほか、注力するブランドの選択と集中を進め、ブランドごとの収益性や成長性を踏まえて、一部については撤退や縮小も検討するとしています。

また、不振の中国事業については、中国の景気減速を背景に厳しい状況が続くとして、売り上げの規模を追うことはせず、高価格帯のブランドに注力するなどして立て直しを急ぐということです。

資生堂は、すでに中国国内で一部の店舗や事務所の閉鎖も行っていて、藤原社長は会見で「市場の成熟と消費者の節約志向の高まりでこの2年間は楽観視できない。収益性の高いブランドに投資を注力し、市場シェアの回復につなげたい」と話していました。

迫られた構造改革 背景は

資生堂の売り上げ全体のおよそ7割を占める海外事業。

とりわけ、中国でのビジネスの拡大が会社の「成長エンジン」として大きな役割を果たしてきました。

資生堂が中国・北京のホテルなどで化粧品の販売を始めたのは、およそ40年前の1981年でした。

その後、現地生産も開始し、1994年には中国専用のブランド「AUPRES」を発売しました。

2000年のシドニーオリンピック、2004年のアテネオリンピックで中国選手団の公式化粧品として採用されたことなどをきっかけに認知度が高まり、中国国内での販売が拡大します。

2004年からは中国で化粧品の専門店事業も開始し、中国の経済成長も追い風に、2019年には中国事業の売り上げが2000億円を超え、全体の5分の1を占める規模になりました。

この年は、中国人を中心とした外国人観光客による日本国内での販売も増加し、会社全体の売り上げや本業のもうけを示す営業利益も過去最高となりました。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で、業績は悪化に転じます。

外国人観光客による国内での販売が激減したほか、マスクの着用で化粧をする機会が減るなどしたことから、化粧品の需要が一気に落ち込み、2020年は116億円の最終赤字に転落しました。

長引くコロナ禍で化粧品の需要が低迷する中、2021年にはシャンプーなどの日用品事業を売却したほか、香水の販売権やブランドを手放すなど、事業整理を相次いで進める一方、高価格帯の化粧品の販売を強化するなどの対策に乗り出しました。

ただ、事業の柱としてきた中国事業はコロナ禍後も、景気減速に伴う消費の低迷や価格帯の安い中国国内のブランドとの競争の激化などによって苦戦が続いています。

2024年1月から9月までの決算では、売り上げが前の年の同じ時期に比べて中国事業は2%減少、中国・海南島をはじめとする免税店による事業は21%減少しました。

こうした中で、2024年春には国内の従業員の1割強にあたる、およそ1500人の早期退職の募集に踏み切るなど、構造改革に迫られていました。

中国では「コスパ」重視の声

経営の立て直しに向けて構造改革を発表した化粧品大手の資生堂は、中国事業で販売不振に直面しているとしています。

中国では景気が減速するなか節約志向が高まり、最大の経済都市・上海でも化粧品の購入については支払った金額に見合う商品かどうか、「コスパ」の高いものを重視しているという声が聞かれました。

20代の女性は「SNSでおすすめの商品を買います。『コスパ』が良ければ買いますが、『コスパ』が悪かったら買いません」と話していました。

また、別の20代の女性も「『コスパ』を重視しています。国産のものも使い勝手がよくなっているので、以前ほど資生堂のような高級ブランドは求めなくなりました」と話していました。

さらに、別の20代の女性は「資生堂の商品はあまり使いません。最近は、ひときわ目立っているような商品はないように感じます。資生堂の商品は私のような若者よりも年齢の高い人向けの印象があります」と話していました。

また、中国では福島第一原子力発電所にたまる処理水について、東京電力が基準を下回る濃度に薄めた上で海への放出を始めた去年(2023)、SNS上には「放射線ブランドを避けるリスト」などの投稿が相次ぎました。

このリストでは特定の日本の化粧品などが放射線の影響を受けているとする虚偽の情報が書き込まれていました。

資生堂の商品を使い続けているという女性も「当時は影響を感じました。ブランドを替えたり、中国など、日本以外で生産されたものであれば使うようにしたり、影響がないかを重視しました」と話していました。

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