徳島県産業国際化支援機構会長に就いた「いろどり」代表取締役社長の横石知二氏(「いろどり」提供)

 徳島県の後藤田正純知事は29日開会の定例県議会で、県産品の販路拡大のために設立する「地域商社」の会長に、同県上勝町の第三セクター「いろどり」社長の横石知二氏(66)を迎えると明らかにした。横石氏は高齢化が進む町で、和食に添えるモミジなどのつまものを都市部へ出荷する「葉っぱビジネス」を軌道に乗せた仕掛け人で、県もその手腕に期待している。

 複数の関係団体を統合して発足するのは「県産業国際化支援機構」で、12月16日から県庁内で業務を始める。県産品の販路拡大や県内企業の海外進出支援のほか、民間企業の取り組みと競合しない地域や商品などについては、自ら「商社」としてセールスすることも視野に入れている。

 機構トップの横石氏は農協職員だった1980年代、関西の飲食店に入った際、若い女性客が、刺し身の皿に添えられたモミジの葉をハンカチに包んで大切に持ち帰るのを見て、町内に豊富にある葉っぱを集めて出荷することを思いついた。

 料亭などから注文があると、ファクスなどで町内の高齢者宅に知らせ、高齢者が周辺の山々で摘み取って届けた葉っぱを出荷するビジネスモデルだ。

 取り組みの結果、町のつまものは全国でも高いシェアを持つとされ、参加する高齢者の所得増につながっただけでなく、つまものを探して歩くため、高齢者の健康面でもプラスになったとされる。

 2012年には、一連の取り組みが俳優の吉行和子さんや富司純子さん、中尾ミエさんらの出演によって映画「人生、いろどり」として完成し、劇場公開されて話題となった。

 身近にある葉っぱ類を、高齢者のやる気を引き出して集め、買い手が求める場所や時間に提供して高い付加価値を生み出す「葉っぱビジネス」は県内外から注目された。

 横石氏は「県産品のブランド化やブラッシュアップから、観光・食・文化の一体的なプロモーション、県内企業の技術のPRや海外ビジネス情報の収集・提供をはじめとする各種相談まで、ワンストップで県内事業者の事業活動を支援したい」と意気込んでいる。【植松晃一】

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