FRBは今月1日までの2日間、金融政策を決める会合を開きました。

1日に公表された声明では「経済活動は堅調なペースで拡大している。インフレ率はこの1年で和らいでいるが依然として高い水準だ」としたうえで、新たに「この数か月間、2%の物価目標に向けたさらなる進展はみられない」との文言を盛り込みました。

そして、「インフレ率が持続的に物価目標の2%に向かっていると確信が深まるまで利下げは適切ではない」と指摘しています。

会合の結果、政策金利を現在の5.25%から5.5%の幅と、およそ23年ぶりの高い水準のまま据え置くことを決定しました。FRBが金利を据え置くのは6会合連続です。

インフレの根強さを示す経済指標が相次ぐ中、FRBとしては高い金利水準を維持することでインフレを抑え込むねらいです。

一方、インフレの抑制に向けて国債などの金融資産の保有を減らしていく「量的引き締め」については、6月以降縮小のペースを減速させることを決めました。国債の保有を減らす上限を月に600億ドルから250億ドルに引き下げるとしています。

日米金利差 なぜ円安要因に?

なぜ日米で金利差があると円安になるのでしょうか。

基本的にお金は金利の低いところから高いところに流れる性質があります。高い金利で資産を運用したほうが利益が見込めるからです。

例えば金利5%の債券に1万円投資すれば、1年間で500円を受け取ることができます。金利1%の債券だったら100円しか受け取れません。

アメリカ・FRBの政策金利は5.25%から5.5%。日銀はマイナス金利を解除しましたが、政策金利は0%から0.1%です。投資家は金利が高いドルに投資したほうが多くの利益が得られると考え、円を売ってドルを買う動きにつながるのです。

さらにFRBは去年12月の会合で会合参加者の政策金利の見通しを示し、ことし、年3回の利下げが想定される内容を明らかにしました。

アメリカが利下げに踏み切れば日米の金利差は縮むことになりますが、このところインフレの根強さを示す経済指標が相次ぎ、市場では利下げに踏み切る時期が遅れ、回数も減るのではとの観測が強まっています。

金利差は縮まらないとの見方から、円安圧力が続いているのです。

FRBの金融政策 これまでの経緯

FRBが利上げを開始したのはおととし3月。それまでのゼロ金利政策を解除して、金融引き締めへと転換します。

金融引き締めによって景気を冷やすことで、インフレを抑えこむねらいでした。

しかし、その後もインフレに収束の兆しは見えず、おととし6月の消費者物価指数は前の年の同じ月と比べて9.1%の上昇と、およそ40年ぶりの記録的な水準となりました。このためFRBは、おととし6月から11月の会合まで4回連続で0.75%という大幅な利上げに踏み切りました。

これまでの急速な利上げの影響を受けて、去年3月から5月にかけては「シリコンバレーバンク」や「ファースト・リパブリック・バンク」など3つの銀行が経営破綻しました。

こうした中でもFRBはインフレ抑制を優先にする姿勢を示し、去年3月と5月にそれぞれ0.25%の利上げを決定しました。

続く6月の会合ではそれまでの金融政策の影響を評価するためなどとしておととし3月以降、初めて利上げを見送りましたが、去年7月の会合ではインフレの要因である人手不足が続いていることなどから0.25%の利上げを決定。これで政策金利は5.25%から5.5%の幅と、2001年以来、22年ぶりの高い水準となりました。

FRBの利上げはこれでおととし3月以降、あわせて11回に及びました。

去年9月からことし3月の会合では物価の上昇が落ち着き、インフレの要因となっていた人手不足に改善の兆しが見られたことなどから5会合連続で利上げを見送り、FRBがいつ利下げに踏み切るかが焦点となっていました。

しかしその後、インフレの根強さや経済の堅調さを示す経済指標が相次いで発表され、FRBのパウエル議長も繰り返し「利下げを急ぐ必要はない」という認識を示しました。

市場ではFRBの利下げが当初、市場が見込んでいた時期より大幅に遅れるという見方が一段と強まっていました。

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