パウダースノーが楽しめるとして国際的な人気を誇るニセコ地域のスキー場4カ所の共通リフト券(大人1日券)が今冬、初めて1万円を超えた。ニセコ地域を訪れた外国人観光客の延べ宿泊数は昨冬、過去最高を更新。人気を追い風に2024年度から3年間で100億円超を投資するスキー場もある。一方、道民からは「高くてとても行けない」とため息が漏れる。【今井美津子】
スキー場は、ニセコアンヌプリ山(標高1308メートル)の裾野の倶知安町側に「ニセコ東急グラン・ヒラフ」と「ニセコHANAZONOリゾート」、ニセコ町側に「ニセコビレッジスキーリゾート」と「ニセコアンヌプリ国際スキー場」がある。
レギュラーシーズン(今季は14日~25年3月23日)の4スキー場の共通リフト券は年々値上がり。22~23年に8500円だった大人1日券は、23~24年に9500円、今季は1万500円と初めて1万円を突破した。近隣のルスツリゾートも1万4500円となり、周辺地域を含めて値上がりが続く。
円安などで外国人観光客が増加し、ゲレンデでのリフト待ちが長時間化。混雑緩和に向けて行うスキー場運営会社の設備投資の費用がリフト券に反映されている形だ。さらに、昨今の物価高が拍車をかけている。
倶知安町によると、ニセコ地域(倶知安町、ニセコ町、蘭越町)の23年度の外国人宿泊客の延べ人数は、コロナ禍前の18年の68万2500人を大幅に上回る73万8800人となり、過去最高を更新した。冬季は特に外国人の割合が高まる。23年度の冬季(12~4月)に倶知安町に宿泊した8割が外国人だった。
倶知安町側にあるグラン・ヒラフは昨冬、来場者数が過去最高を記録。リフト乗車までに1時間以上かかることもあったという。今冬は混雑緩和のため、新たに10人乗りのゴンドラを稼働させた。従来のリフトに比べて輸送力は1・5倍となり、毎時2800人を運ぶことが可能になったという。
グラン・ヒラフを運営する東急不動産は25年度、中腹と山頂方面をつなぐ「キング第3リフト」を4人乗りから6人乗りに増強する。26年度に3人乗りの「エース第3リフト」も4人乗りに更新し、輸送力を2倍に向上させる。一方、新レストランの開業なども予定し、さらに海外客の集客に力を入れる。3年間の投資総額は100億円超になるという。
一方、地域住民は複雑な思いを抱える。
倶知安町は町内の小中学生に町内のグラン・ヒラフ、HANAZONO両スキー場のシーズン券を無料で配布する。一般の町民もリフト券を割引価格で購入できるものの、町内の30代女性は「昨年は混雑時間を避けないと滑れなかった。道路も混んでいて困る」と打ち明ける。毎年、家族でスキーに行くという札幌市の公務員の男性(48)は「いくら雪質がよくても、リフト券が高すぎると行けない。町外の道民のことは考えていないのだと思う」とこぼした。
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