奥田社長が陳謝“深くおわび 大変重く受け止めている”

野村証券ではことし7月、営業職として勤めていた社員が広島市に住む顧客の女性に睡眠作用のある薬物を飲ませたうえで現金1780万円余りを奪って住宅に火をつけたとして強盗殺人未遂と放火の罪で11月に起訴されました。

この社員は8月に懲戒解雇されています。

この事件を受けて野村証券は3日に会見を開き、奥田社長は冒頭で「このたび当社の元社員が逮捕・起訴される事案で被害者の皆さま、多くの関係者のみなさまに多大なるご迷惑とご心配をおかけし、深くおわび申し上げます」と述べました。

また「会社を信頼して取り引きをいただいているお客様の大切な資産をお預かりしている金融機関として絶対にあってはならない事案であり、たいへん重く受け止めています」と述べ、陳謝しました。

さらに今回の事件が業界全体に与える影響について問われたのに対し、奥田社長は「業界全体、金融界に対し、ビジネスのやり方について不安感をお客様に感じさせてしまうことになったことは本当に重く受け止めています。そもそも金融機関は、信頼するから安心して取り引きをいただけるということで成り立っているので、信頼回復はしっかりと取り組んでいきたい」と述べました。

社長ら経営幹部10人が役員報酬を自主返上

野村証券は、奥田社長をはじめ経営幹部10人が責任を明確化するとして役員報酬を自主的に返上することを明らかにしました。このうち奥田社長は役員報酬の30%を3か月、自主返上するとしています。

理由について問われると「今回の事案を受けて当社としてはより根源的な、あるいは道義的な責任、それから信頼回復に対して重い責任を負っているというふうに認識をしている。この中で、代表取締役全員およびウェルスマネジメント部門の担当の役員より、自主返上の申し出を受け、外部の弁護士からアドバイスを受けて、相当な水準となるように金額を決定し、監査等委員会にも報告をしたうえで決定している」と述べました。

一方、奥田社長は「辞任ということは考えていない。お客様の信頼、それから安心をしっかり確保できる環境づくりを進めていくというのが私の責任だと思っている」と述べ、社長にとどまり会社の信頼回復に努める考えを示しました。

顧客の信頼揺るがす不祥事相次ぐ

【顧客への強盗殺人未遂と住宅放火の罪】
広島市での事件ではことし7月、営業職の社員だった梶原優星被告が顧客の女性に睡眠作用のある薬物を飲ませたうえで現金1780万円余りを奪って住宅に火をつけたとして、強盗殺人未遂と放火の罪で11月、起訴されました。

これまでの調べで女性と夫に投資話をもちかけて事件の数か月前から現金を自宅に準備させ、奪った現金はみずからの投資の損失の穴埋めや、さらなる投資にあてていた疑いがあることがわかっています。

検察は被告の認否について明らかにしていませんが、被告の弁護士によりますと「火をつけたのは殺害するためではなく証拠を隠滅するためだった」などと説明しているということです。

【顧客から9700万円余だまし取る】
広島の事件以外にも野村証券では岡山支店の元社員、建部昌弘被告が、かつての同僚と共謀しておととし4月までのおよそ半年間に支店時代の顧客など7人からあわせて9700万円余りをだまし取ったとして、詐欺や出資法違反などの罪に問われました。

被告は詐欺の罪について無罪を主張しましたが、1審の岡山地方裁判所はことし6月、懲役3年6か月を言い渡し、被告の控訴を受けた2審でも11月、広島高等裁判所岡山支部が懲役3年6か月の実刑判決を言い渡しました。

【トレーダーが日本国債の先物取引で価格不正操作】
金融市場の取り引きでも不祥事がありました。3年前、野村証券のトレーダーが日本国債の先物取引で価格を不正に操作したとして金融庁から2100万円あまりの課徴金を納付するよう命じられ、ことし10月、会社は課徴金を納付しました。

この不祥事では、価格の不正操作があった当時の社長をはじめ現在の社長や副社長などあわせて8人が、受け取った役員報酬の一部を自主的に会社に返すことを決めています。

会見で奥田社長は「日本の国債の取り引きにかかわる課徴金事案ということで大変重く受け止めております。現在社内でルールの適正化などを行って再発しないよう取り組んでいるところです」と述べました。

奥田社長“私自身が先頭に立って信頼回復に努めていく”

会見では、不祥事が相次いでいるのは企業風土に問題があるのではないかと問われ、奥田社長は「真摯(しんし)に受け止めさせていただいております」と述べました。

また、会社の信頼回復をどのように進めていくのかを問われると「私自身が本当に先頭に立って信頼回復に努めていく。それから再発防止について絶対に起こさないんだということを、私自身もしっかり受け止めて、社員のみんなにもよく理解してもらって進めていく。再発防止という点では私がいちばんのリード役となるつもりで取り組んでいる」と述べました。

再発防止策は

野村証券が発表した再発防止策では、
▽社員による不正行為を事前に見抜けるよう副社長をトップとする「業務改革推進委員会」を社内に設置するとしています。

また、社員が顧客の自宅を訪問する際の監督を強化するため、
▽当面は管理者が同席する、または訪問の前後に管理者が顧客と電話で面談するとしています。

さらに、
▽顧客と接点のある営業担当者については会社が貸与している携帯電話や社用車のドライブ・レコーダーなどを使って顧客の訪問、面談などに不審な点がないかどうかをチェックするということです。

一方、顧客の資産管理サービスを手がけるウェルス・マネジメント部門では、今回の事件を受けて社員の採用・選考では倫理観やコンプライアンス意識の基準をより厳しくするとしています。

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