中国電力の島根原子力発電所2号機(松江市)が7日に再稼働した。同社としては東京電力福島第1原発の事故後初めての再稼働で、収益環境は大きく改善する。国内では事故後14基目の再稼働となったが、次に稼働時期が決まっている原発はなく、電力の安定供給と脱炭素をめざす国の目標は道半ばだ。

中国電は7日午後3時ごろ、核分裂反応を抑える制御棒を引き抜き、原子炉を起動した。起動後は数時間程度で核分裂反応が安定して続く「臨界」に達する見通し。12月下旬にも発電と送電を始める。2025年1月上旬の営業運転再開を予定している。

中国電は島根2号機の再稼働により経常利益ベースで年約400億円の増益効果を見込む。火力発電の割合が減り燃料調達コストを抑えられるためだ。25年度の自社発電電力量における原子力の割合は15%程度としている。

年間を通じて島根2号機が稼働した場合、約250万トンの二酸化炭素(CO2)を削減できると試算する。約90万世帯分の年間排出量に相当する。

島根2号機は福島第1原発と同型の沸騰水型軽水炉(BWR)で、東北電力女川原発2号機(宮城県)に次いで2基目の再稼働となる。東日本大震災後に先行して再稼働した原発は加圧水型軽水炉(PWR)だった。タービンを回して発電するのに使う蒸気が発生する仕組みが違う。

中国電力島根原発2号機。右は1号機(11月、松江市)=共同

電力需要はデジタル化の進展などで今後増える見通しだ。電力の安定供給と脱炭素の両立のため、国のエネルギー基本計画は30年度時点で原子力の電源構成割合を20〜22%に高める目標を掲げる。

経済産業省によると、23年度の電源構成(速報値)に占める原子力発電の比率は8.5%だった。女川2号機や島根2号機の再稼働で24年度の原発比率は上昇が見込まれるが、30年度の目標達成は遠い。

島根2号機に続き再稼働の時期が明確に決まっている原発は現時点ではない。東京電力柏崎刈羽原発7号機(新潟県)は原子力規制委員会の審査に合格済みだが、地元同意を得られるめどは立っていない。

中国電にとっては、島根2号機の再稼働で使用済み核燃料の問題も改めて浮上する。

国は原発から出る使用済み核燃料を国内で再処理し、取り出したプルトニウムやウランを再び燃料として使う核燃料サイクルの推進を掲げる。中核となる日本原燃の再処理工場(青森県六ケ所村)の稼働は見通せず、原発敷地内での保管が満杯になれば発電が難しくなる。

中国電は山口県上関町で使用済み核燃料を一時保管する中間貯蔵施設の建設に向けて調査を進めるが、町議会などから反対も出ている。計画が進むかは不透明だ。

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