住友金属鉱山やブラジルのバーレなどニッケル生産会社が加盟する世界的な業界団体のニッケル協会で2025年1月、現会長のハドソン・ベイツ氏の後任としてベロニク・スチューカース氏がトップに就く。同氏は日本経済新聞の取材に、存在感を高める中国やインドネシアの企業に加盟を求める方針を示した。主な一問一答は以下の通り。
――ニッケルの世界市場をどう見るか。
「ニッケルの世界市場のうち、ステンレス向けは65%ほどで最も多い。新興国でインフラ建設が進み、使用量が増えている。16%は電気自動車(EV)の電池材料向けで、その他にもニッケル合金などで使われている。ニッケル協会は(第三者の立場を保つため)価格や需要の将来の見通しについてはコメントできない」
「インドネシアはニッケルの資源がとても豊富なため、企業の投資が増えている。同国の政府は鉱山開発から電池にいたるまで産業チェーンをつくることを考えており、政策も後押しとなっている」
「オーストラリアでも生産が盛んで、フィリピンも採掘量が多い。カナダやアフリカや欧州でも、新規鉱山の探索が行われている。中国でも採掘はされているが、中国企業はむしろ国外で積極的に投資をしている」
――ニッケル協会とはどんな団体か。
「ニッケル協会は3つの部署がある。まず市場状況を分析し、ニッケルの活用を呼びかけていくアピールを行う部署がある。健康や環境、生物多様性などへの影響をみる部署もある。3つ目が、サステナビリティーや規制、政策を管轄している部署だ」
「当協会にはカナダや日本、欧州、南米などの14社の企業が加盟している。カナダに本部があるほか、ブリュッセル、米国、東京、北京、シンガポールなどにオフィスがある。加盟企業の動向次第で、その他の拠点開設も検討したい」
――中国やインドネシア企業の現状はどうか。
「中国とインドネシアの企業は加盟しておらず、加盟を促している。両国の企業は比較的新しい企業が多く、非常に長い歴史をもつ既存の加盟企業とは異なる。当協会にもっと親しんでもらうことが重要だ」
「協会は両国の政府とも話をしている。中国では北京のオフィスを通じ、サステナビリティーなどの話題について政府側と関わりをもっている。インドネシア政府との交流も始めた」
――欧州連合(EU)がEVなどに使われる蓄電池のリサイクルを域内で義務づける規制を導入します。主要材料のニッケルでは使用済み電池から再利用した原料の使用を段階的に義務づける方針です。
「欧州では電池に関する規制が色々と進んでいる。協会は各国の規制について調べており、最新の知識や情報を提供できる」
ベロニク・スチューカース氏 2012年にニッケル協会に入社し、ブリュッセルを拠点として公共政策・持続可能性担当ディレクターを務めている。企業の金属や化学部門において規制や政府関連業務、アドボカシー(政策提言)業務で20年以上の経験をもつ。英国エクセター大学で有機化学の博士号を取得。鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。