グーグルは量子コンピューターや関連半導体の開発を進めている(写真は同社が2019年に「量子超越」を達成したときの画像)

【バンクーバー=渡辺直樹】米グーグルは9日、量子コンピューターに使う新型の半導体を開発したと発表した。天文学的な時間がかかる計算を5分未満で実行できるほか、技術開発の壁となってきた計算時のエラーを劇的に減らすことに成功した。既存のスーパーコンピューターに代わる計算インフラとして、幅広い用途への実用化に道を開く。

新型の半導体「Willow(ウィロウ)」を開発した。世界のランキングで上位の性能を持つ米国のスパコン「フロンティア」で10の25乗年(1の後にゼロが25個)という時間がかかっていた計算を5分未満で実行した。

グーグルは同日、同半導体を用いた量子コンピューターで計算エラーを劇的に減らしたとの研究成果を発表した。計算単位である量子ビットの数を増やしても、その都度エラー率を半減させることに成功した。より大型の量子コンピューターの製造が可能になる。

量子コンピューターは既存のスパコンで数十年かかる複雑な問題を数分で解けるとされる。現状では特定の計算にしか使えないが、技術改良で将来的にはより複雑な問題を解き、新しい素材や化学品の開発につながると期待されている。

グーグルは2014年に量子コンピューターに参入した。19年には半導体「シカモア」を開発し、スパコンで1万年かかる問題を約3分で解き「量子超越」と呼ぶ技術革新を達成したと発表した。今回の研究で性能のさらなる向上を進める。

量子コンピューターは米国の巨大テクノロジー企業が研究開発で先行している。中国、欧州、日本、カナダなど世界各国・地域も次世代の重要な情報技術として、政府支援により研究機関やスタートアップが開発を競っている。

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