【ニューヨーク=清水石珠実】「メディア王」ルパート・マードック氏(93)が家族に財産管理を委託する「家族信託」を巡り長男に限定して経営権を移譲できるよう条件変更を求めていた裁判で、変更が認められない可能性が高まった。担当する米西部ネバダ州の裁判所の委員が訴えを退ける判断を下した。米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)が10日までに報じた。
マードック家は家族信託を通じて、米メディア大手のフォックス・コーポレーションとニューズ・コーポレーション2社のそれぞれの議決権の約4割を握る。ルパート氏の死後は年長4人の子供が平等に家族信託を引き継ぎ、傘下のメディア企業の経営に関与する取り決めになっている。
だが今回、同氏は長男のラクラン氏だけが経営に関与できるように内容を変更することを希望した。同氏の死後も系列メディアの報道が保守路線を維持する狙いがある。ルパート氏とラクラン氏は保守で政治信条を同じくするが、次男のジェームズ氏はリベラル志向を強めている。
裁判は訴訟資料も含め、非公開で進められている。家族信託の内容には「撤回不能」の文言が入っており、説得力のある特殊な事情が認められた場合のみ変更が可能になる。NYTが独自入手した資料によると、担当の委員は今回のルパート氏の試みを「(正当な理由があると)みせかけた周到な演技だ」と一蹴した。
委員の判断を参考に、最終判断はこれから裁判官が下すことになる。ルパート氏側は、訴えが正式に退けられた場合には上訴する意向を示している。
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