自民、公明両党は20日、2025年度与党税制改正大綱を決定した。最大の焦点だった所得税がかかり始める「年収103万円の壁」について、控除額を20万円引き上げて123万円にすると明記した。「少数与党」となった自公の大綱は、キャスチングボートを握る国民民主党の意向を色濃く反映するものとなった。
年収の壁を巡っては、国民民主は178万円への引き上げを主張し続けており、自公も3党による協議を継続する方針。このため大綱には、3党幹事長間の合意である「178万円を目指して、来年から引き上げる」との文言も盛り込んだ。
現行の年収103万円の課税水準は、最低限の生活費に課税しない基礎控除(48万円)と会社員らの経費を差し引く給与所得控除(55万円)の合計。自公は物価上昇により実質的な税負担が増えているとして、1995年以降事実上据え置いてきた基礎控除を30年ぶりに引き上げるなどして対応する。95年以降の食料や家賃、光熱費など生活に身近な物価の上昇率(20%)に基づき、二つの控除を10万円ずつ引き上げ、課税水準を123万円とする。
引き上げは25年分の所得から適用する。企業の事務負担を減らすため、源泉徴収ではなく年末調整で対応する。税法上の規定で所得税と連動する住民税の給与所得控除は26年度分から10万円引き上げる。
税制による働き控えを解消するため、大学生ら19~22歳の子を扶養する親らの税負担を軽くする特定扶養控除も見直す。国民民主の要望を踏まえ、控除の対象となる子の年収要件を現行の103万円から150万円に引き上げる。新たに「特定親族特別控除」(仮称)を創設し、150万円を超えた途端に扶養対象外にならないよう、150万円超から段階的に控除額を減らし、188万円超で控除をなくす。
そのほか、ガソリン税の上乗せ分(1リットル当たり25・1円)についても国民民主の意向を踏まえ、3党幹事長間の合意文書と同様の「暫定税率は廃止する」との文言を明記した。廃止時期などの議論は来年以降になるが、実現すれば地方税分を含めて年約1・5兆円の税収減となる。
懸案の一つだった防衛増税は、26年4月から法人税とたばこ税の増税を始める一方、所得税の増税時期の決定を見送った。公明が「壁」の引き上げによる減税との整合性を問題視し、増税に反対する国民民主に配慮した。政府は防衛力強化のため、27年度までに増税で1兆円超を確保する方針を掲げており、先行する2税の増税でほぼ対応できると見込む。所得税の増税時期は「『103万円の壁』の引き上げなどの影響も勘案しながら、引き続き検討する」とした。【杉山雄飛、小田中大、野間口陽、古川宗】
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