大林組は23日、佐藤俊美副社長(64)が2025年4月1日付で社長兼最高経営責任者(CEO)に昇格する人事を発表した。蓮輪賢治社長兼CEO(71)が率いる体制から世代交代して更なる成長を目指す。佐藤副社長は「持続的な成長を図るため時には建設の枠を超えて事業を拡大する」と話した。東京都内で開いた記者会見での主なやり取りは以下の通り。
――このタイミングで、なぜ交代を決めたのですか。
蓮輪社長「建設資材価格の高騰などで悪化していた建設事業の業績がおおむね回復してきた。株価が上場来高値を更新するなど、資本効率を意識した経営にも社内外で一定の評価を得た。中核の国内建設事業以外の事業が国内建設と同等以上の収益を創出する方向へ加速すべく、次世代にバトンタッチするのがよいと判断した」
――事務系からのトップ昇格は珍しいですが、受け止めはいかがですか。
佐藤副社長「(続投する)大林剛郎会長(70)と蓮輪社長から指名されたが、想定していなかった。会社でトップに立つのはエンジニアなんだろうと考えており戸惑った。一方でグループに貢献できるのであれば恩返ししたい」
蓮輪社長「当社は建設業を中核としているが、リーダーがエンジニアでなければならないというのはいわゆる『アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)』だ。経営と技術的な見識は全く別だと思う。経営は全社的な観点から企業価値の向上、資本効率をどう高めていくか、人をどう育てるかが重要だ」
――佐藤副社長は中核の国内建設事業をどう評価しますか。
佐藤副社長「国内の建設市場は世界的にみて大きい。リーディングカンパニーの一社として市場を堅持していきたい。建設事業は生産性の改善が課題だ。成長を考えれば請負中心の事業だけでなく、事業領域を広げることも重要だ。これまでも進めてきた海外での建設事業の拡大も大きな要素だ」
――他の事業はいかがですか。
佐藤副社長「中核の国内建設事業に加えて開発や再生可能エネルギー、新領域などそれぞれに人材を適切に配置している。グループの経営は一定程度成熟している。経営基盤を万全にして、持続的な成長を図るため時には建設の枠を超えて事業を拡大する。出自にとらわれないリーダーシップが必要とされる場面があると思う」
――これまでどのような経験を積まれましたか。
佐藤副社長「北米やアジアで働き、M&A(合併・買収)も経験した。北米ではグループ会社の清算も手掛けた。M&Aは買う時はよいがその後きちんと成長させる覚悟がなければならない。グローバル化が進むなかで経験を役立てたい」
蓮輪社長「経営計画に向けて職種を超えてリーダーシップを発揮してくれた。グローバルでの経験があり、海外グループ会社の経営陣ともよいコミュニケーションができる。国内の事業領域のトップともよく対話してくれている」
――蓮輪社長はご自身の仕事をどう振り返りますか。
蓮輪社長「外部環境がめまぐるしく変わるなか、企業価値をどう高めるか。木の建築では建設だけでなく材料調達で(22年度に連結子会社化した)サイプレス・スナダヤ(愛媛県西条市)と組み、北米では水道プラント工事会社のMWH社を買収した。ブランドビジョンにある『ひらく』という言葉を意識してきた」
――蓮輪社長はこれから副会長として何に取り組みますか。
蓮輪社長「執行や経営に直接の口出しはしないつもりだ。日本建設業連合会(日建連、東京・中央)での活動によって様々な事業領域の方とネットワークを得た。これらを通じて今後、当社の社外活動に貢献したい」
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