通勤する人たち=東京都港区のJR新橋駅前で2021年4月26日、竹内紀臣撮影

 転勤辞令が出たら退職を考える人は約7割――。大きな組織で働く人や昇進を考える人にとって付き物とされてきた転勤について、抵抗感を抱く人の比率が高いことが民間調査で改めて裏付けられた。実際に転勤辞令がきっかけで退職に至った人も3割いた。働き方の多様化が進む中、転勤を避けようとする動きが目立ってきた。

 求人情報サイト「エンゲージ」を運営するエン・ジャパンが4月、同サイトの利用者1039人を調査。「転勤の辞令が出た場合、退職を考えるきっかけになるか」の質問に対し、69%が「きっかけになる」と回答した。

 「きっかけになる」の回答者は、年代別では、20代は78%▽30代は75%▽40代以上は64%。男女別では男性62%、女性75%となり、若手や女性ほど転勤への抵抗感が強く表れた。

 転勤の辞令が出たら、どのような対応を想定しているのか。「承諾」は8%にとどまり、「条件付きで承諾」は42%だった。その条件を選択肢の中から複数回答で尋ねると、家賃補助や手当が出る(72%)▽リモートワーク可能(51%)▽昇進・昇給が伴う(45%)――が上位を占めた。経済的な支えがあることや働きやすさなどが転勤を承諾する後押しとなるようだ。

 転勤を「条件に関係なく拒否」する人は21%。その理由(複数回答)として最も多いのは「配偶者の転居が難しい」(40%)だった。持ち家があることや育児・介護がしにくいことを挙げた人も、それぞれ約3割いた。

 調査では実際に転勤辞令が出たケースも聞いた。辞令を受けた経験がある231人のうち、転勤を理由に退職した人は31%に上った。

 こうした結果をもたらした一因として、エンゲージ企画責任者の春日井淳氏は共働き家庭の増加を挙げる。単身赴任の選択肢もあるが、育児や介護を分担する夫婦も増えている。春日井氏は「単身赴任を選ぼうとしても、ワンオペとなる配偶者にとって育児・介護と仕事の両立は難しく、転勤そのものを断念するケースも多い」と明かす。【嶋田夕子】

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