米大手投資ファンドのブラックストーン・グループは13日、医薬品の臨床試験(治験)支援の国内大手であるアイロムグループを買収すると発表した。およそ450億円を投じて同社の発行済み株式の55%を取得する。アイロムGが担える治験事務の補助を拡充し、ブラックストーンが世界で投資する製薬会社との協業につなげる。
ブラックストーンが6月末までにTOB(株式公開買い付け)を始め、東証プライム市場に上場するアイロムG株を非公開化する。同社による日本での非公開化案件は初めて。アイロムGの創業家による45%の持ち分は維持する。
アイロムGは医療機関の治験を補助するSMO(治験施設支援機関)事業で国内3位となる2割ほどのシェアを持つ。医療機関では負担の重い書類作成などの事務や治験全体の進捗の管理を受注する。
日本では多くの被験者を集めて治験を進めるための環境が整っておらず、海外で使える薬を処方できない「ドラッグロス」が社会問題になっている。直近5年間に欧米で承認された新薬のうち、7割近くが日本国内で未承認だったとの試算もある。
アイロムGはブラックストーン傘下で人材の育成や採用を拡充し、引き受け可能な治験の数を増やす。ブラックストーンは米国の創薬支援企業への投資実績が複数あり、企業価値を高めたノウハウを活用する。有力な創薬企業も投資先に抱えており、アイロムGを活用した日本での治験の展開にもつなげる狙いだ。
ブラックストーンの企業投資部門で日本代表を務める坂本篤彦氏は「アイロムGの事業の選択と集中を進め、数年内でのSMOの国内首位をめざす」と語る。再生医療や海外事業といった非中核部門は縮小を検討し、がん分野を中心とするSMOに経営資源を集める。
ブラックストーンの日本での企業投資は今回が4例目となる。医療・医薬品分野は4つある注力領域の1つで今後も投資を活発にする方針だ。
2021年には武田薬品工業からビタミン剤「アリナミン」など一般用医薬品(大衆薬)事業を約2400億円で買収した。19年には鎮痛剤の「カロナール」を主力品とするあゆみ製薬(東京・中央)の全株式を買い取った。
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