19日、イランとアゼルバイジャン国境のダムを訪れたライシ大統領㊧=WANA・ロイター

【ドバイ=福冨隼太郎】イラン最高指導者のハメネイ師は19日、同国のライシ大統領らが搭乗したヘリコプターの事故について「国政に混乱はない」と発言した。イランメディアは同日、ライシ師らが搭乗するヘリが異常着陸する事故があったと伝えていた。搭乗者の安否は不明で、捜索は悪天候で難航している。

ヘリには同国のアブドラヒアン外相も同乗していた。

ハメネイ師は演説で「我々は尊敬する大統領とその仲間を神が国民の腕のなかに戻すことを望んでいる」と指摘。国民にライシ師らの無事を祈るよう求めた。「国民は心配や不安を抱くべきではない」とも語った。

イランメディアなどによると、事故があったのはイラン北西部の東アゼルバイジャン州の山中。3機のヘリが編成を組んで飛行し、2機は無事に着陸した。救助隊が捜索にあたっているが、現場が濃い霧に覆われるなど悪天候で難航しているという。

イラン軍やイラン最高指導者に直属する革命防衛隊なども捜索にあたっている。国営テレビは濃霧のなか現場付近を捜索する救助隊の様子や、ライシ師らの無事を祈る市民らの様子を繰り返し放映した。

19日、濃霧のなか捜索にあたる救助隊員(イラン北西部東アゼルバイジャン州)=イラン赤新月社・ロイター

ライシ師は19日、イランと隣国アゼルバイジャンの国境付近のダム関連の式典に出席していた。アゼルバイジャンのアリエフ大統領とも会談していた。その後に事故に遭遇した。

イランはイスラム教シーア派の聖職者が国を統治する。国政全般の最終決定権を持つ最大権力者はハメネイ師で、選挙で選ばれる大統領は行政府の長という位置づけだ。

ライシ師は司法府長官などを経て2021年6月の大統領選挙で当選し、同年8月に大統領に就任した。対米強硬路線などを基軸とする保守派として知られている。高齢のハメネイ師の後継者候補ともされている。

事故を受けて、周辺国はライシ師らの安否を気遣う声や、イラン政府への協力を表明する声明を発表した。

隣国トルコのエルドアン大統領は「我々はイラン当局と協力して事態を注視している」とX(旧ツイッター)に投稿した。トルコ外務省は、同国政府が捜索や救助のためイラン政府を支援していると明らかにした。

23年に中国の仲介で外交を正常化したサウジアラビアの外務省は声明で「重大な懸念をもって受け止めている」と強調。「困難な状況においてイランのそばに立ち、イランが必要とする支援を提供する用意がある」と表明した。

アラブ首長国連邦(UAE)も「大きな懸念をもって注視している。捜索救助活動を支援するため、できる限りのことを提供する用意がある」とする声明を出した。

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