イランの国営テレビは19日午後、北西部の東アゼルバイジャン州でライシ大統領やアブドラヒアン外相らが搭乗したヘリコプターが不時着する事故があったと伝えました。

現場は山の中で、イランの内相は霧などの悪天候が事故につながったという見方を示した上で「困難な着陸を余儀なくされた」と説明しています。

また、一部の地元メディアは、「墜落した」と伝えていて、詳しい状況はわかっていません。

国営通信は一夜明けた20日朝、捜索に加わっている赤新月社の代表の話として、ヘリコプターの機体が見つかったと伝えました。「状況は良くない」とも伝えていて、機体の状態やライシ大統領ら搭乗していた人たちの安否はわかっていません。

ライシ大統領は近くで行われたダムの完成を記念する式典に出席していたということです。

国営通信によりますと、付近では夜を徹して救助隊が捜索を続けていましたが、悪天候のため、現場に近づくことが難しく、難航していました。また、国営テレビは、現場付近は標高2500メートル以上の山が連なり、雪も降っていて、冷え込みも厳しいと伝えていますが、事故の詳しい状況はわかっていません。

トルコ政府系通信社 “トルコの無人機が熱源探知”

トルコの政府系通信社アナトリア通信は20日「トルコの無人機がライシ大統領を乗せたヘリコプターの残骸のものと見られる熱源を探知し、イラン当局に情報を共有した」と伝えました。

無人機が上空から撮影したとみられる映像も公開し、雲の切れ目から丘の斜面のような場所を写していて、熱源を示す黒い点が確認できます。

トルコ国防省は19日、イラン当局の要請に応じてトルコの無人機などが捜索活動に加わったと発表していました。

林官房長官 “搭乗者の無事を願っている”

林官房長官は、午前の記者会見で「ライシ大統領やアブドラヒアン外相の安否を含め、詳細は明らかになっていないと承知している。ヘリコプターの搭乗者の無事を願っており、引き続き状況を注視していく」と述べました。

また、日本として支援を行う考えがあるかについて「イランとの伝統的な友好関係に鑑み、今後、必要に応じて検討していく」と述べました。

米国務省 状況を注視

イランと対立するアメリカの国務省の報道担当者は19日、状況を注視しているとしたうえで「現時点ではこれ以上のコメントはない」としています。またホワイトハウスによりますと、バイデン大統領も状況について報告を受けているということです。

現場に向かう救助隊の様子伝える イラン国営テレビ

イランの国営テレビは19日、ライシ大統領などを乗せたヘリコプターが不時着したとされる現場に向かう救助隊の様子を伝えています。映像では、濃い霧で視界が悪い中、舗装されていない道路を走る車両や、複数の救急車などが停車している様子が確認できます。また、救助隊員とみられる人たちが、丘陵地のような場所を徒歩で進んでいる姿も、確認できます。イランのテレビのキャスターは、「大統領を乗せたヘリコプターの捜索活動が続いている。気象条件、濃い霧の影響で、救助隊にとっては非常に困難な状況だ」と伝えています。

イラク赤新月社 “捜索チームの派遣準備整っている”

イランの隣国イラクの赤新月社は19日、現地での捜索活動を支援するため50人からなる救助捜索チームの派遣準備が整っているとSNSに投稿しました。一緒に投稿された写真には、多くの人たちが1つの部屋に集まっている様子が写っています。イラクのスダニ首相はこれに先立って、赤新月社などに対し捜索を支援するよう指示していました。

“ヘリコプターの中からダム視察の様子” イラン国営テレビ

イランの国営テレビは、事故の前にライシ大統領らがヘリコプターの中からダムを視察する様子を放送しました。映像のヘリコプターが不時着したものかどうかは不明ですが、映像には3人の男性が写っていてライシ大統領とアブドラヒアン外相が窓の外を見るような様子が確認できます。

“ヘリコプターが飛び立つ際の写真” ロイター通信

ロイター通信は19日、イランのライシ大統領らを乗せたヘリコプターがイランとアゼルバイジャン国境付近を飛び立つ際に撮影されたとする写真を、配信しました。ライシ大統領は19日、国境付近でダムの完成式に参加していて、写真は式典の参加後に撮影されたものとみられます。写真には白と青の機体のヘリコプターが山間地を飛行する様子が写っていて、この時点では視界が悪い状態ではなく、地上の車両なども見えています。

ライシ大統領とは

ライシ大統領は63歳、イラン北東部のマシュハド出身のイスラム法学者で、イスラム体制の維持で重要な役割を果たす司法府で検事総長などの要職を歴任し、司法府の代表も務めたあと、2021年6月の選挙で大統領に選出されました。保守強硬派の指導者として知られ、現在85歳のイランの最高指導者、ハメネイ師の有力な後継候補の1人とされてきました。おととし、イランでスカーフのかぶり方をめぐり逮捕された女性が死亡し、大規模なデモが各地に広がった際には「治安を乱すことは許されない」として、取締りを強化しました。また、外交面では反欧米の強硬路線をとり、とりわけ緊張が続くガザ情勢をめぐってはイスラム組織ハマスを支持し、イスラエルやイスラエルを擁護するアメリカと敵対する姿勢を強めていました。

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