韓国の尹錫悦大統領(左端)と会談する岸田首相(右端)=26日、ソウル・大統領府(代表撮影・共同)

 【ソウル=上野実輝彦】岸田文雄首相は26日、日中韓首脳会談に出席するため訪問している韓国で、中国の李強(りきょう)首相と会談した。岸田首相は、東京電力福島第1原発処理水の海洋放出に対して中国が続ける日本産水産物の輸入規制について、即時撤廃を改めて求めた。岸田、李両氏の正式会談は李氏が首相に就任した2023年3月以降初めて。  岸田首相が会談後、記者団に説明した。  首相は処理水放出と関連し、国際原子力機関(IAEA)の実施しているモニタリングが中国の理解を促進することに期待していると伝達。事務レベルの協議を加速することで李氏と一致した。  中国人民解放軍が軍事演習を実施したことなどによる台湾周辺での緊張に関しては、最新の動向を注視しているとしつつ、台湾海峡の平和と安定が国際社会に重要だと改めて伝えた。  尖閣諸島を含む東シナ海などでの軍事活動の活発化について、深刻な懸念を表明。日本の排他的経済水域(EEZ)に設置されたブイの即時撤去を要求した。中国国内で邦人が拘束されている事案に関しても、早期解放を求めた。  首相は記者団に「昨年11月に習近平(しゅうきんぺい)国家主席と再確認した、戦略的互恵関係の推進や建設的、安定的関係の構築という方向性について、懸案の進展を図っていくことを確認した」と語った。  岸田首相が李氏と会うのは、昨年9月に東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議で訪れたインドネシアで約15分間の立ち話を行って以来。同年11月には、韓国で日中韓外相会談が行われたが、その後、日中間の首脳・閣僚級の会談は開かれていなかった。

◆日韓首脳会談で尹大統領、LINE問題は「政治とは別」

 【ソウル=木下大資】岸田文雄首相は26日、韓国ソウルの大統領府で尹錫悦(ユンソンニョル)大統領と会談した。首相は海洋進出を強める中国を念頭にした「自由で開かれたインド太平洋」の強化に向け、日韓の連携を「一層緊密化していきたい」と表明。27日の日中韓首脳会談を前に、日韓の結束を再確認した形だ。  会談に同席した韓国の金泰孝(キムテヒョ)国家安保室第1次長によると、両首脳は「中国を積極的に関与させ、3国間の協力を模索することで、インド太平洋地域の平和と繁栄へ力を合わせる」ことで合意した。水素エネルギーに関する政策や、重要鉱物の供給網安定化に向けた協力を加速することでも合意した。  外務省によると、両首脳は来年の日韓国交正常化60周年へ向け、互いに準備を進めていくことで一致。若者の交流促進などに向け、日韓の経済界が設けた「未来パートナーシップ基金」の拡大を日本側が発表したことを歓迎した。  尹氏は、韓国民の関心が高い同国のIT大手ネイバーが大株主のLINEヤフーを巡る問題に言及。同社の情報流出を受けて総務省が資本関係の見直しを含めた検討を要求したことに韓国世論が反発しているが、大統領府高官によると、尹氏は「外交関係とは別の問題と認識し、両国間の不必要な懸案にならないよう管理する必要がある」との認識を示した。  外務省は「(両首脳の)信頼関係が表れた会談だった」と振り返った。

◆6月中旬に「中韓外交安保対話」の初会合

 【ソウル=上野実輝彦、北京=石井宏樹】韓国の尹錫悦大統領は26日、日中韓首脳会談のため訪韓している中国の李強首相とソウルで会談し、両国の外交・安全保障当局の次官・局長級協議体「中韓外交安保対話」を発足させることで合意した。6月中旬に初会合を開くとしている。  韓国大統領府高官は、外交・安保当局間の「2プラス2対話」だと説明した。  尹、李両氏はこのほか、サプライチェーン(供給網)の輸出管理に関する協議体の発足や、中韓自由貿易協定(FTA)の第2段階交渉の再開などでも合意した。安保や経済分野での関係改善を求める両国の思惑が一致した形。中国国営通信新華社によると、李氏は「双方は経済問題の政治化に抵抗しなければならない」と強調し、米国が主導する中国経済のデカップリング(切り離し)から距離を置くよう求めた。  韓国大統領府高官は、尹氏は北朝鮮の核・ミサイル開発やロシアとの兵器取引などが国連安全保障理事会の制裁決議違反にあたると指摘し、中国に常任理事国としての役割を果たすよう求めたと説明。中国による南シナ海や東シナ海への進出についても「割愛したわけではない」とした。  韓国で来年に開催予定のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせた習近平国家主席の訪韓に関しては「具体的に言及しなかった」と話した。 

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