【ソウル=木下大資】韓国大統領府は3日、北朝鮮と2018年に結んだ南北軍事合意の効力を停止する方針を発表した。北朝鮮が5月28日夜以降、大量のごみなどをぶら下げた風船を韓国側へ飛ばしたことなどへの対抗措置。正式決定すれば、南北軍事境界線付近での拡声器による対北宣伝放送の再開が可能になる。偶発的な軍事衝突を防ぐための合意が無効化されることで、地域の安全保障状況が不安定になりかねない。

◆「南北間の相互信頼が回復するまで」

韓国国旗

 3日の国家安全保障会議(NSC)で、4日の閣議にかけることを決めた。NSCは、合意の効力停止で「制約されてきた軍事境界線一帯での軍事訓練が可能になる」と説明。停止期限は「南北間の相互信頼が回復するまで」とした。  尹錫悦(ユンソンニョル)政権は昨年11月、北朝鮮の軍事偵察衛星打ち上げを受け、合意のうち軍事境界線付近での偵察機飛行を制約していた条項の効力を停止。北朝鮮は直後に事実上の合意破棄を宣言している。

◆批判ビラ再開なら「100倍のゴミと汚物」

 北朝鮮は2日の国防次官談話で「ごみ15トンを気球3500個で韓国国境付近と首都圏に飛ばした」と説明。韓国側から脱北者らの団体が飛ばす金正恩(キムジョンウン)体制批判ビラへの意趣返しは果たしたとして、一時中断するが、対北ビラ再開時には「100倍の紙くずと汚物を集中散布する」と強調した。  韓国政府は、対北ビラは表現の自由の問題で軍は関知しないとの立場。2日には北朝鮮の「汚物風船」に対し張虎鎮(チャンホジン)国家安保室長が「正常な国家では想像できない非常識な挑発行為。北朝鮮が堪え難い措置に着手する」と話した。 

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