日本発の農業スタートアップ、オイシイファームが米東部ニュージャージー州で稼働したイチゴ工場の内部

【ニューヨーク=西邨紘子】日本発の農業スタートアップ企業オイシイファームは3日、米東部ニュージャージー州で大規模なイチゴの植物工場を稼働したと発表した。育成管理や収穫に人工知能(AI)やロボットを活用し、完全無農薬で生産する。同社産のイチゴは既に米国東海岸の高級スーパーなどで販売しており、新工場稼働で生産能力を引き上げる。

新しい植物工場「メガファーム」は、プラスチック工場を転用した。サッカーのフィールド3面分に相当する2.2万平方メートルの建物内に設置した250の可動式栽培棚でイチゴを屋内栽培する。

工場では水の循環システムに数億円を投じ、大半を再利用できるようにした。電力は隣接する太陽光発電所から引き、環境負荷を軽減した。既存工場に比べ、イチゴ1株当たりの電力消費を14%引き下げた。

イチゴの収穫時期の判断にAIの画像判断を採用し、収穫をロボット・アームで自動化するなど労働負荷の軽減も進めた。同社は5〜10年後に包装や検品を含め、全工程の自動化を目指している。

オイシイ社は2016年に創業した。日本の農業技術を取り入れた植物工場の国外展開を進める。23〜24年に新工場建設資金などに総額200億円を集めた。NTTや安川電機などが出資で参加する。

近年、米国でも日本産イチゴは、品質が良く甘い「高級品」として認知が広がり始めた。オイシイ社のイチゴは、ニューヨーク市内では高級スーパーのホールフーズが22年から販売している。オンラインの高級食材サイトでは1パック10ドル(1560円)前後で販売されている。米国で一般的な1パックあたり5〜6ドルの無農薬イチゴと比べ高価格だが「需要に対して十分な供給量に達していない」(同社)という。

オイシイ社の共同創業者の古賀大貴・最高経営責任者(CEO)は「農業の持続可能性が危ぶまれる中、(新工場は)技術の飛躍でサステナビリティと高生産性を実現した」とコメントした。今後、他の農作物にも生産内容の多角化を目指す。

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