バイデン大統領=4月10日撮影

 【ワシントン=浅井俊典】アメリカのバイデン大統領は4日、メキシコとの南部国境の管理を強化する大統領令を出した。不法越境者が一定数を超えた場合、亡命申請を受理せず入国を許可しない。不法移民対策は11月の大統領選の主要争点で、厳格な国境管理をアピールすることで有権者の懸念を緩和させたい考えだ。

◆一時的な国境封鎖可能にする大統領令

 ホワイトハウスで演説したバイデン氏は「この措置は、私たちが国境を管理し、秩序を回復するのに役立つだろう」と強調した。  大統領令では、不法越境者が直近1週間の1日平均で2500人を超えた場合、亡命申請を受理せず、1500人を下回れば受理を再開するとしている。米メディアは今回の措置を「一時的な国境封鎖」(ニューヨーク・タイムズ紙)と報じている。  2021年1月にバイデン氏が大統領に就任して以降、寛容な移民政策をとるとの期待が高まり、中南米からの不法越境者は増え続けている。南部国境を越え、拘束されたり退去させられたりした人は23会計年度に約247万人と3年連続で過去最多を更新。野党共和党はバイデン氏の移民対策を「失敗だ」と批判していた。

◆「亡命求める人の命を危険にさらす」

 ロイター通信の5月の世論調査によると、バイデン氏と共和党のトランプ前大統領のどちらが移民対策で優れているかとの問いに、回答者の42%が、トランプ氏と答え、バイデン氏(25%)を17ポイントも上回った。  バイデン氏には、今回の措置によって対策が後手に回っているとの批判をかわす狙いがある。一方で「決して移民を悪者扱いしない」とも強調したが、寛容な移民政策を求める身内の民主党議員から反発を招くのは必至で、一部の人権団体は「亡命を求める人の命を危険にさらす」として訴訟を起こすと発表した。 

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