5月初めに北京へ赴任してから、一度も人民元の現金を見たことがない。全ての支払いがスマートフォン決済。17年前に訪れた際は当然、現金払いだっただけに右往左往するばかりだ。 本来なら病院でしか手に入らない処方薬でさえスマホで事足りる。買い物アプリで欲しい薬を選び、症状と個人情報を入力するだけで電子処方箋が発行され、すぐ家に薬が届いた。 週末、天安門広場を訪ねたら地下鉄の最寄り駅を出たところで警察に止められた。前日までにオンライン予約をしないと入れない、と知った。立て看板に予約方法を案内するQRコードがあり、同じく知らずに訪れた観光客たちが次々とスマホをかざす。地方から来た中国人男性は「いま予約して明日また来るしかない」とぼやいた。
北京の天安門広場そばで、QRコードをスマホで読み込んで入場予約をする人
何もかもスマホを通さないと事が進まない現実に違和感を覚えるが、北京市民の知人が「日本もいずれそうなるし、もう社会が後戻りすることはあり得ないでしょ」と言うのは妙に説得力があった。もやもやとした疑問をのみ込まなければ、デジタル強国を掲げる中国で生きていくことはできなさそうだ。(河北彬光、写真も)
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