インターネットを通じた買い物が主流となった中国で、犬や猫といったペットもネット上で売買されるようになり、消費トラブルが相次いでいる。日本をしのぐ急速な少子化でペット需要が増す中、スマートフォン一つで買える手軽さで人気を集めるが、健康状態が悪いペットが届くケースが頻発。わずか1週間ほどで死んでしまうことから「1週間ペット」との新語まで生まれ、取り締まり強化を求める声も上がり始めた。(北京・河北彬光)

◆「犬1匹9000円、安いよ」

5月下旬、中国のペット市場からのライブ配信で紹介される子犬。人気の子犬が映ると、視聴者がこぞって「買う」と書き込んだ

 中国の動画アプリ「快手」。記者がペットの代理購入を手がけるライブ配信を視聴すると、中国内のペット市場を訪れた配信者が、路上に並んだケージから子犬を次々と取り出して映した。「この犬は400元(約9000円)。見た目がよくて安いよ」。こうまくし立てると、複数の視聴者が競うように「私が買う」と画面上のチャット機能に書き込んだ。  ペット売買のライブ配信は多数あり、中国各地のペット市場から連日のように生中継される。配信者は視聴者に代わって購入し、手数料で稼ぐ。ネットで買い物をする便利さに慣れた中国の消費者にとってペットを買うのも抵抗感がなくなりつつあり、配信者は旺盛な需要をつかんでいる。

◆健康と偽り、死後に音信不通

 ただ消費者が現物を見ていないのを逆手に取り、既に病気のペットでも健康だと偽る不正が相次ぐ。  中国国営テレビは、頻繁にライブ配信されていた江蘇省のペット市場で、偽造された予防接種記録がわずか5元(約110円)で売買されたり、食品を運ぶトラックを装って多数の子犬をケージにすし詰めにして出荷している悪質な業者の実態を報道。ライブ配信で売買されたペットがすぐ死ぬ例が多発しているとして「1週間ペット」問題だと伝えた。  上海市の会社員女性(28)は5月上旬、ライブ配信を見てこの市場の子犬を1600元(約3万5000円)で買ったが、到着から3日目の朝に死んだ。本紙の取材に「届いた時から歩かず伏せてばかりで、水をあげても吐いた。1週間どころか、たったの『3日間ペット』。病気の犬を売り付けられた」と嘆く。配信者は事前に検査済みで健康だと説明したが、死んだと訴えると数日で音信不通になった。

5月上旬、上海市の女性がライブ配信を見て購入した子犬。既に弱った状態で届き3日目で死んだ=提供写真

◆「だまされた」「確かめるすべがない」

 日本の環境省によると、国内で対面を経ずネット上のやりとりのみで犬猫などのペットを販売することは法律で禁じられているが、中国に同様の規制はない。ただ国営テレビの報道を受け、江蘇省の地元政府は劣悪な実態が発覚したペット市場を営業停止とした上で実態調査に乗り出した。  中国のネット上では、ライブ配信の購入者たちが「だまされた」と次々に投稿している。取材に応じた女性は結婚して日が浅く、すぐ子どもを望むのは現実的でないと思い、犬を買ったという。「新しい販売方法に興味を持って利用したが、本当に健康かどうか確かめるすべがない。被害が繰り返されないように同様の売買はできないようにしてほしい」と望んだ。

 中国の少子化とペット市場の拡大 中国の研究機関などの推計によると、女性1人が生涯に出産する子どもの数を示す合計特殊出生率は2022年に1.09まで低下し、日本の1.26を下回る。一方で犬猫などペットの飼育数は2億2000万匹に達し、直近5年で5000万匹増えた。教育費など子育ての経済的負担が大きいことから、代わりにペットを飼う需要が増えている。特に若者に人気で、ペット産業の市場規模は23年に2793億元(約6兆1400億円)に達した。



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