ニューヨーク州知事はニューヨーク市内での渋滞税の導入を無期限で中止すると決定した=AP

【ニューヨーク=弓真名】米東部ニューヨーク州のキャシー・ホークル知事は5日、ニューヨーク市中心部マンハッタンの一部地域で導入が決定していた「渋滞税」について、導入を無期限で中止すると発表した。長引く物価高が市民の生活を圧迫するなか、渋滞税の導入は経済的な負担が大きいと判断した。

6月30日から乗用車がマンハッタンの60丁目以南のエリアを通行する際に適用される予定だった。ニューヨーク州都市交通局(MTA)によると、適用後は1日1回まで朝5時から午後9時までは通行料金として15ドル(約2300円)程度を支払う必要があった。

ホークル知事は渋滞税導入の中止を決めた理由として、物価高が続くなかでの家計への影響の大きさをあげた。5日の記者会見では「実情に応じて行動しなければならない」と話し、立案当初から状況が変化したと説明した。

新型コロナウイルス禍以前と比べてオフィスへの出勤率が低下していることにも触れた。渋滞税を導入すれば「車で出勤する層が自宅勤務できるように訴えたり、市内に出かけなくなったりする可能性がある」(ホークル知事)と話した。消費の落ち込みやオフィス需要の低下などへの懸念も決断の背景にあるとみられる。

MTAは渋滞税の徴収で150億ドルの財源を生み出すと想定していた。計画が無期限の中止となったいま、ニューヨーク市の主要な地下鉄やバス、郊外と市中心部を結ぶメトロノース鉄道などで修繕などの計画の修正を迫られる可能性が高い。

ニューヨーク市中心部には平日に1日平均70万台以上の車両が乗り入れる。渋滞税を導入すればこのうち1日あたり10万台程度削減できると見込んでいた。世界でもシンガポールや英国ロンドンなどで導入例がある。

こうした期待の一方で、反発も大きかった。ニューヨーク州への通勤者も多いニュージャージー州は23年7月、税導入がニュージャージー州に与える影響の評価が不十分だとして米当局を訴えていた。

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