「地方の観光」をテーマにした卒業研究の一環で、香港の学生が山陰地方を訪れ、現地調査を行いました。香港からの訪日旅行者が再び増える中、山陰の観光の現状は、学生たちの目にどのように映ったのでしょうか?

鳥取県米子市のホテルで6月3日に開かれた研究成果の報告会。集まったのは約120人。香港でもトップクラスの“香港中文大学”でマーケティングを学ぶ大学院生です。5月に山陰各地を訪問し、卒業研究の一環として現地調査を行いました。
2023年5月に新型コロナが5類に移行し、訪日旅行客、インバウンドの受け入れが本格的に再開。香港からも2024年4月までに約80万人が日本を訪れるなど、訪日旅行の需要が急速に回復しています。

一方で観光客の急増で、観光地周辺の住民生活に「負の影響」が及ぶオーバーツーリズムが問題になるなど、東京、京都、大阪などの定番の旅行先「ゴールデンルート」に集中する訪日観光客を、どのように地方に分散させるかが課題となっています。

こうした日本の観光の現状を踏まえ、学生たちが山陰両県を対象にマーケティングやブランディングについて自ら体験して課題を探ります。
2日間の日程で、テーマごとに分かれて山陰の各地を訪問。聞き取りなどの調査を行い、その結果を論文にまとめます。

松江市で調査を行っていたのは、アレックスさんとチャールソンさん。島根県東部の宣伝、観光体験が研究テーマです。

チャールソンさん:
民間組織や行政が、中国や香港などの人たちを呼び込むための施策を理解することが重要。

2人が巡るのは、松江城から出雲大社へ向かうルート。島根観光の定番ともいえるコースですが、松江城を出てすぐに困ったことが起きました。

アレックス:
Uberみたいにタクシーを呼ぼうとしたけど、この場所では使えませんでした。バスに乗らなきゃいけないけど、番号がないので正しいバスを見つけるのが難しいです。

公共交通機関を乗り継いで行こうと考えましたが、タクシー配車アプリが使えませんでした。一方、バスでの移動も停留所などの表示はほとんどが日本語。外国人観光客にとってはハードルが高くなってしまっています。

チャールソンさん:
前日にプランを立てていたが、計画通りにいかなくて混乱している。バスも電車も見つからないので、集合に遅れてしまった。

香港や「ゴールデンルート」では当たり前の配車アプリやオンラインでの情報提供など、旅先でも手放すことのないスマートフォンを活用したサービスが不十分だと感じたようです。

チャールソンさん:
オンラインサービスの導入は、システムを構築しないといけないので、難しい問題だと思う。でもタクシー専用の場所などは用意できると思う。

それでも目的のバスを見つけた2人。スマートフォンを頼りに移動を続けます。松江市のしんじ湖温泉駅では切符も購入、一畑電車に乗り換えて出雲大社にたどりつくことができました。

チャールソンさん:
「縁結びや神話で有名だったので、どんな場所か知りたい」

その出雲大社の印象は。

チャールソンさん:
「電車から湖が見えて、駅から出雲大社までも近くていい。観光客にとってはいい事だと思う」

山陰を代表する観光地である出雲大社。松江からの移動の行程を含め、満足度が高い観光体験だと評価しました。

そして6月4日に開かれた研究成果の発表会。優秀なチームには賞が贈られます。
審査の結果、アレックスさんとチャールソンさんの発表は大賞には選ばれませんでしたが、山陰の観光課題を掘り起こしてくれました。

チャールソンさん:
鳥取・島根の両県を回ったんですけど、2つの県の違いも見えて、鳥取では利便性の高いタクシーもあったりした。ポテンシャルがとても高いと思った。

山陰の観光地では、プロモーション、宣伝・PRの工夫が必要なこと、ITの活用などインフラ面で課題が残ると指摘しました。

チャールソンさん:
「毎日が色々な発見に溢れていた。もうちょっとプロモーションや交通の便がよくなれば、もっとたくさんの人に来てもらえるのに、観光客に伝わっていないのがもったいない」

香港の学生の目には、山陰の観光地がインバウンドを呼び込める可能性がまだまだあると映ったようです。

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