【フランクフルト=林英樹】パレスチナ自治区ガザの新たな停戦案をめぐりイスラム組織ハマスは11日、仲介国カタールとエジプトに前向きに応じる考えを伝えた。イスラエルは文言が修正されたとし「拒否したに等しい」と批判。これに対しハマスは「新たな案は提示していない」と反論し、両者の主張は食い違いをみせている。
新停戦案は5月末、バイデン米大統領が明らかにした。ブリンケン米国務長官は12日、ハマスから新停戦案に対する回答を受け取ったカタールのムハンマド首相兼外相と会談した。
ブリンケン氏は会談後の会見で、ハマスが新停戦案に多くの修正を要求し「修正の中には実行不可能なものもあった」と説明した。一方、サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は「提示された修正の多くは軽微な内容で、予想外のものはなかった」と語った。
ロイター通信によると、ハマス側はイスラエルによるガザ攻撃の恒久的な停止、軍の完全撤退などを改めて要求したとみられる。イスラエル高官は「停戦案の最も重要な部分について文言が改変された。バイデン大統領が提示した人質解放の提案も拒否した」と同通信に話した。
エジプト高官によると、ハマスは恒久的な停戦とガザからの軍撤退について米国の文書による保証を求めているという。
ハマス幹部は12日、中東のテレビ局に「我々の関与の仕方を確認しただけで、新たな案を提示したということはない」と反論した。そのうえで、ハマス側が多くの修正を求めたと主張するブリンケン氏について「解決ではなく問題の一部になっている」と批判した。
国連の独立国際調査委員会は12日、イスラエルとハマス双方がガザで「戦争犯罪を行った」とする報告書を発表した。
報告書では、イスラエルが食料や医薬品などをガザに搬入するのを妨げたとして「飢餓を戦争の手段に使った」と糾弾した。ハマスや同組織に協力する他の武装組織などに対しては「イスラエル人や外国人を意図的に死傷させ拉致した」と非難した。
世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は12日、「かなり多くのガザの住民は現在、危機的な飢餓状態に直面している」と警鐘を鳴らした。
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