19日、平壌で首脳会談に臨むロシアのプーチン大統領㊧と北朝鮮の金正恩総書記=ロイター

【ソウル=甲原潤之介】ロシアのプーチン大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記は19日、平壌で首脳会談を開いた。両国の軍事や経済に関する包括的な連携を定めた条約を締結する見通しだ。軍事面での関係深化が鮮明となり、日本や欧米諸国への安全保障上の脅威が一段と高まる。

プーチン氏は19日未明に平壌に到着した。金正恩氏が空港で出迎えて抱擁し、両国の友好関係を強調した。プーチン氏の訪朝は2000年以来24年ぶり。19日午後、代表団を交えた会談に続き、首脳同士の個別会談を開いた。

ロシアメディアによるとプーチン氏は会談で「新たな基本文書が作成され、長期にわたる我々の関係の基礎となるだろう」と述べた。北朝鮮との次回の首脳会談がモスクワで開催されることに期待を示した。

金正恩氏は「世界の情勢は複雑で急速に変化している。我々はロシアとの戦略的交流を強化する」と述べ、ロシアのウクライナ侵略を改めて支持した。

首脳会談後、両者は「包括的戦略パートナーシップに関する条約」に署名する見通しだ。

旧ソ連と北朝鮮は1961年に「友好協力相互援助条約」を結んだ。有事において双方の軍が介入する規定があり軍事同盟にあたる条約だったが、ソ連崩壊後に失効した。

ロ朝は2000年に軍事同盟の条項がない「友好善隣協力条約」を結んだ。ロシアのウシャコフ大統領補佐官は17日、今回の包括的戦略パートナーシップに関する条約は友好善隣協力条約に代わるものになると述べた。

プーチン氏と金正恩氏は23年9月にロシア極東で首脳会談を行った。プーチン氏は北朝鮮の人工衛星開発を支援する意向を示したほか、会談後のインタビューで北朝鮮との軍事協力について一定の制約があるとしつつも「展望がある」と述べていた。

ロシアは北朝鮮が製造した弾薬などをウクライナ侵略の前線で使用していると米韓は懸念を強めている。

韓国の申源湜(シン・ウォンシク)国防相は米ブルームバーグ通信のインタビューで、少なくともコンテナ1万個の輸送を突き止めたと明らかにした。500万発近い砲弾を運べる規模としている。

プーチン氏の訪朝は13〜15日にイタリアで開いた主要7カ国首脳会議(G7サミット)の直後となった。G7はロシアとの取引に関わる金融機関への制裁を打ち出したほか、ロ朝の軍事協力を強い言葉で非難した。

プーチン氏は19日夜にも平壌を出発し、ベトナムの首都ハノイに向かう予定だ。通算5期目に入った5月以降、中国を手始めにベラルーシなど友好国を相次ぎ訪問している。長期化するウクライナ侵略で対立する欧米への対抗軸の形成を急ぐ狙いとみられる。

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