注目
肉類を使わない料理 注目食材は…
パリのカウントダウン時計 残り100日刻む
パリ 高齢の市民からは不安の声も
エッフェル塔の近くの仮設スタジアム公開
競技会場の95%は既存施設 活用進める
テロの危険性高まるなか 課題は警備の強化
日本選手団の公式ウェア初披露 イメージは“パリの日の出”
目をつけた食材は、南米原産とされる穀物で、タンパク質やミネラルが豊富な「キヌア」です。フランス中部の生産地から取り寄せました。鍋で生クリームとマスカルポーネチーズを溶かしたあと、水とともにオーブンにかけて柔らかくしたキヌアを入れ、野菜のブイヨンを入れたあとパルメザンチーズを加えてリゾットの要領で調理します。盛りつけでは、ヨーグルトの上に調理したキヌアをのせたあと、炒めてサクサクした食感にしたキヌアも上に散らします。味わいに立体感を持たせるためだということです。肉類のほか、アスリートの体調に配慮して生の食材をできるだけ排除した一方で、キヌアをリゾット風に調理し、味わいも豊かにすることで、栄養面と、食べ応えを追求したといいます。調理時間は5分ほどで済み、選手村では24時間、食事を提供するということです。
パリオリンピック・パラリンピックでは大会を通して排出される温室効果ガスの量を過去の大会と比較して半減させることを目標に掲げています。
実現に向けた取り組みは大会期間中、選手や観客、ボランティアなどに提供される食事、およそ1300万食分にもおよび、組織委員会は、食材に野菜や豆、穀物などを増やす、食品ロスを減らす、使い捨てプラスチックを減らす、地元の食材を使って輸送に伴う排出を減らす、などの対策で、1食当たりに排出される温室効果ガスをこれまでと比べて半減させようとしています。具体的には、牛などの家畜は、餌の生産や飼育の過程で大量の温室効果ガスを排出することから観客やボランティア向けの料理は全体の量の半分ほどを、肉類を使わない、ベジタリアン向けのものにするほか、選手村でも選手に対して肉類を使わない料理の提供を増やすことにしています。
開会式まで100日となったパリ。エッフェル塔近くの港に設置され、開幕までの残り時間を刻むカウントダウン時計は、開会式が行われる時間にあわせて開幕までの残り日数が「100」に替わりました。100年ぶりにパリで開催される大会では、空手と野球・ソフトボールが除外され、新たにブレイキンを加えた32競技の合わせて329種目におよそ1万人の選手が参加する見込みです。
パリ市内で市民の声を聞きました。
40代の男性は「世界中から最高のスポーツ選手たちが集まるので、最高の祭典になる。開会式はスタジアムではなく、セーヌ川で開催すると聞いている。これほどオープンな開会式は初めてで、特別なものになると思う」と期待を寄せていました。30代の男性は「パリではあらゆる歴史的建造物を見ることができるので、フランスのイメージアップにつながる。東京大会が成功したので次はヨーロッパの番だ。すべてが上手くいくよう願っている」と話していました。一方、高齢の市民からは不安の声があがりました。70代の女性は「交通機関に混雑などの問題が出るし、非常にお金がかかる。それに治安の面でも難しい状況になる。どの政治家もそうだが、約束するばかりで結局は何もしない。そのために私たちが大きなツケを払うことになる」と不満そうな顔で話していました。80代の男性は「フランスは極めて不安定な状態にある。大会にパリ市民は頭を抱えていて多くの人がこの期間にパリを離れようと考えている。地下鉄の運賃は2倍にも3倍にもなるし、すべてはオリンピックのためだが住民の犠牲の上に大会は成り立っている」と話していました。
開幕まで100日になるのに合わせて、大会の組織委員会は17日、エッフェル塔近くにある公園内に建設を進めている、仮設の「エッフェル塔スタジアム」を塔の2階部分を報道陣に解放して公開しました。エッフェル塔スタジアムはビーチバレーの会場となり、公園の形に添って観客席がそそり立つようにすり鉢状に建てられ、収容人数はおよそ1万3000人を予定しています。工事は先月から始まり、観客席はほぼ完成しているほか、ビーチバレーのコート用の砂もすでに運び込まれ、今後は競技用の設備を整える作業を中心に行うということです。大会組織委員会のオレリー・メルルスポーツディレクターは「会場の準備が進み、大会がここで開催されるという実感が湧いてきてとても楽しみだ。選手や世界の人々をより良い環境で受け入れられるよう、準備をしていきたい」と話していました。
パリオリンピック・パラリンピックでは、新たな会場は極力作らず、既存の施設を競技会場などとして活用を進めています。
競技会場の95%は既存の施設を使うか、仮設の会場を利用する計画でなかにはコンコルド広場やベルサイユ宮殿など、歴史的な建物も含まれています。競技会場では既存の施設を損なわないよう工夫がされ、たとえば、コンコルド広場は観客席は仮設で設置され、広場にある像などは、破損しないよう、大会期間中は板などで保護されることになっています。
また、大会をきっかけに大規模な改修工事を行い、古くなった設備を再生させようという施設もあります。パリを代表する建築物の1つ、グランパレは1900年のパリ万博の会場としてパリ中心部のシャンゼリゼ通り近くに建てられた巨大な展示会場で、古典的な石造りの外観と、モダンなガラス張りの屋根が特徴です。「ネフ」と呼ばれる中央の展示スペースは長さ200メートル、高さは最大45メートルの広大な空間で、パリオリンピックでは、フェンシングとテコンドーの、2つの競技が行われます。グランパレは建設されてから120年を超え、老朽化が進んでいたことから、大会を機に、3年前から大規模な改修工事が進められています。NHKは今月12日、特別な許可を得て、工事が続く、内部の様子を撮影しました。競技会場となる「ネフ」では、内壁や6000トンを超える鉄骨の塗装が塗りなおされていたほか、天井のガラスもすべて手作業で清掃が行われ、建設された当時の明るさを取り戻したということです。また、選手が入場する際に使われる予定だという中央にある馬てい形の大階段は、アールヌーボー様式の曲線的なデザインが特徴で、建設当初の色である、深い茶色に塗りなおされていました。そして、安全対策やバリアフリー化のため、非常口やエレベーターが増設されていました。さらに暑さ対策の一環としてあらたに床下にパイプが張り巡らされ、夏場に水を通すことで、屋内の温度を下げる効果が期待され、大型のエアコンを導入するより環境面での負荷も少ないということです。
グランパレは競技会場としては9000人程度の収容人数が予定されているということで、観客席は主に仮設で設置され、大会が終了したあとは、撤去されて、もとの展示会場に戻されることになっています。グランパレの改修に伴う総工費は4億6600万ユーロ、日本円にしておよそ760億円で、フランス政府の補助金や、企業の文化支援事業などからも拠出されています。グランパレのトップ、ディディエ・フュジリエ総裁は「フランスには伝統を守りつつ、改修によって再生させるという考え方があります。新たな技術を取り入れつつも、グランパレは不変です。アスリートにとって、歴史あるすばらしい建物で行われる競技は、忘れられないものになるでしょう」と述べ、大会をきっかけに大きく改修されたグランパレが今後さらに長く、使いやすい施設に生まれ変わることに期待感を示していました。
「広く開かれた大会」をスローガンに掲げるパリ大会はテロの脅威が指摘される中、安全性をどう確保するかが大きな課題となっています。
ロシアによるウクライナ侵攻や中東情勢の緊迫が続くなか、大会のホスト国のフランス政府は、警備の強化に力を入れてきました。さらに、先月、ロシアのモスクワ郊外で起きたテロ事件を受けて、国内でもテロの危険性が高まっているとして、フランス政府は、全土で警戒レベルを最高水準に引き上げました。現在、国内の観光地などの人が多く集まる場所では軍がパトロールを行うなどして警備を強化しているほか、大会期間中には、一日3万人の警官らが動員され、競技会場などの警備にあたるということです。とりわけ注目が集まっているのが開会式です。各国の選手らが船に乗り、セーヌ川上を行進する大胆な演出となる計画で、開会式をスタジアムの外で行うのは大会史上初だということです。ただ、開会式の観客数は、当初の想定の60万人から、およそ半数の30万人余りに削減され、警備上の理由からだとみられています。また、開会式の1週間前から、会場となるセーヌ川周辺には、テロ警戒のための入場制限地区を設け、事前に登録した住民や通勤者など以外の出入りを厳しく制限する計画です。さらに、マクロン大統領は今月15日、地元メディアのインタビューで、テロの危険が高まった場合、当初予定していたセーヌ川ではなく、スタジアム内での開催も選択肢にいれていることを明らかにしました。一方で、マクロン大統領は「開会式はできるかぎり美しいものにしたいし、そのための手段はある。テロリストの望みは、私たちの夢を止めることだ」と述べ、テロ対策を強化した上で、予定どおり開会式を開催する姿勢も強調しました。
パリオリンピック・パラリンピック組織委員会のエスタンゲ会長は4月10日、開幕まで100日となるのを前にパリ市内で記者会見を行いました。このなかでは開会式や各競技会場の設営・準備が順調に進んでいるとし、「ラストスパートが本当に楽しみだ。ここ数年で築いてきた自信を胸に最終段階を迎える準備は整っている」と大会の成功に自信をのぞかせました。一方で、テロ対策など安全の確保についての質問が集中し、エスタンゲ会長は「パリ大会で実施されるセキュリティ対策は最高水準のもので、開会式では4万5000人が警備にあたるなどその規模は極めて大きい。大会成功のカギはセキュリティにかかっていて大会全体の安全が確保されなければならず、なりゆき任せは一切ない」と強調しました。
パリオリンピックの開幕まで100日となった17日、パリオリンピックとパラリンピックで日本選手団が着用する大会の公式ウエアが発表されました。
都内で開かれた発表会には、前回の東京大会で2つの金メダルを獲得した体操の橋本大輝選手のほか、レスリングで公式戦133連勝中の藤波朱理選手やパラ競泳で成長著しい17歳の木下あいら選手など15人のアスリートが出席しました。表彰式などで着用する公式ウエアはオリンピック、パラリンピックともに同じデザインで、朝焼けに染まったパリの日の出をイメージして鮮やかな赤を基調としているということです。機能面では現地の寒暖差が大きい気候に対応できるよう、蒸れを軽減できるメッシュの素材が使われています。また、環境に配慮してリサイクルの素材や再生可能エネルギーを活用することで、製造過程で出る温室効果ガスの排出量を東京大会の時よりおよそ34%削減したということです。
東京大会に続く金メダルが期待される体操の橋本大輝選手は「実際に公式ウエアを着て、気持ちが引き締まった。東京大会では団体総合が銀メダルだったので、団体総合と個人総合、種目別の鉄棒で金メダルを取れるように頑張りたい」と決意を語りました。また、パラ競泳の木下あいら選手は「初めてのパラリンピックなので楽しんで、自己ベストを出して金メダルを取りたい」と意気込みを話しました。
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