ドローンから撮影した月影橋の眺め=韓国・安東市で

 日本との国交正常化から来年で60年となる韓国。仁川(インチョン)国際空港に降り立ち、かつて朝鮮半島を統一した新羅(シルラ)の都・慶州のある慶尚道(キョンサンド)、安東(アンドン)と大邱(テグ)を訪ねた。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産に村全体が登録された安東河回村(アンドンハフェマウル)など、古都の魅力がたっぷり。歴史と文化、自然が魅力の街は韓流ドラマの撮影地も多く、聖地巡りをする若者や海外の観光客も増えている。コンサートアリーナを併設する巨大複合リゾートが今春、全面開業した仁川の新たな魅力も伝える。(文と写真=市川千晴)

<安東>◆600年受け継いだ伝統

 「タイムスリップしたような街並みに驚いた」。韓国の新幹線KTXでソウルから約2時間の安東。郊外にある安東河回村は、豊山柳(プンサンリュ)氏の一族が約600年間、生活様式や祭礼の伝統を代々受け継ぎ、今も約130世帯が暮らす。韓国を代表する民俗村で、2010年に世界遺産に登録された。フランスから訪れたカップルは、笑顔で話をした。

村を囲むように川が流れる安東河回村の入り口

両班が暮らす瓦葺きの安東河回村の屋敷


 
 三方を川に囲まれた村は、支配階級である両班(ヤンバン)文化が色濃く残る。両班は瓦ぶきの屋敷に、庶民はかやぶきの家屋に暮らし、家屋を改装した博物館やカフェもある。韓流スターのリュ・シウォンが幼い頃に暮らした実家が宿泊施設に改装され、一日1組限定で宿泊できる。村の対岸にある絶壁の芙蓉台(プヨンデ)は、韓国ドラマ「キングダム」などのロケ地として使われており、コンテンツの聖地として脚光を浴びている。伝統的な生活文化と建築様式をじっくり体感できる場所だ。

安東河回村は樹齢600年のケヤキの木を中心に家屋が配置されている

◆映える夜景100選の月影橋

 「インスタ映え」すると若者らに人気なのが、月影橋(ウォルヨンギョ)。安東ダム近くにかけられた387メートルの歩行者専用の木製橋で、夜間ライトアップされている。三日月形の3、4人載り遊覧船ムーンボートからは幻想的な眺めが楽しめ、韓国観光公社の夜景観光100選に選ばれた。

湖上から眺める月影橋は何ともロマンティック=安東市で

◆ユッケビビンバなどグルメ充実

 グルメも充実している。特産の安東韓牛(アンドンハヌ)を提供する焼き肉店が並ぶカルビ通りのほか、韓国絶品グルメ30選に選ばれたユッケビビンバ店景福宮(キョンボックン)もお薦めだ。国際料理コンテストで金賞を受賞した味のこつは、新鮮な赤身牛肉と、自家製のしょうゆとみそだという。

地元の特産「安東韓牛」を堪能できる炭焼きカルビ

安東市はユッケビビンバが有名。脂身の少ない新鮮な赤身肉と自家製しょうゆなどが味を引き立てる

 鶏の甘辛煮込み料理チムタクも有名で、30店舗が軒を連ねるチムタク横丁がある。全相栄(チョンサンヨン)社長(50)は「栄養満点で日本人もなじみのある味付けなので、ぜひ食べに来て」と話す。

<大邱>◆広大な自然の中で思索にふける

手入れされた樹木に現代的な池も整備される大邱広域市の思惟園

 安東駅から電車で約1時間、大邱(テグ)広域市の人気の瞑想(めいそう)スポット思惟園(サユウォン)。地元の鉄鋼会社会長が70万平方メートルの広大な土地に108本のカリンなどを植樹、韓国式庭園や展望台、教会などを約50年かけて整備、思索にふける場所として2021年に誕生した。豊かな自然の中に、世界的建築家の建造物が点在する癒やしの場として注目。ドラマ「涙の女王」の撮影地となったことで来場者が増えている。同園のソン・ウンジョン理事は「日本人技術者の協力もあり完成した。園に込められた哲学を理解してもらえたら」と話す。入場は予約制。

思惟園には全国からカリンの木が植樹された

地元で親しまれる八公山を眺めながら足湯に浸ることもできる

<仁川>◆5つ星ホテル、カジノ…バカンス気分

 国際空港のある仁川は、新たな複合リゾートの開業でにぎわいをみせている。3月に全面開業した「インスパイア・エンターテインメント・リゾート」は、50万平方メートルを超す敷地に5つ星ホテル、プール、ショッピング施設やレストラン、カジノなどがあり、バカンス気分を存分に味わえる。全長150メートルに渡り巨大なLEDスクリーンが設置された歩道では、天井から壁に映し出された海底や森に入り込んだかのような別世界に浸れる。訪れた日は韓国のアイドルグループ「SHINee(シャイニー)」ワールドツアーが催され、日本からも大勢のファンが訪れていた。

1万5000人の観客が楽しめるアリーナも併設されたインスパイア・エンターテインメント・リゾート

◆草間弥生さんの巨大オブジェも

 複合リゾート「パラダイスシティ」も魅力的だ。5つ星ホテルを始め、レストランやスパ、室内遊園地、クラブ、カジノなどを完備。日本を代表する芸術家、草間弥生さんの水玉模様の巨大カボチャオブジェなど世界的な芸術作品約3千点が施設内のあちこちに展示され、アート鑑賞も楽しめる。

草間弥生さんの作品、巨大カボチャも鑑賞できるパラダイス

 韓国観光公社によると今年4月、韓国を訪問した日本人観光客は約23万人で、女性や30代以下の若い世代が多いという。李鶴柱(イハクチュ)国際観光本部長は「国交60周年をきっかけに、交流拡大と観光客の共同誘致に力を注ぎたい」と語った。(取材・撮影協力=韓国観光公社) 

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