【バンコク=藤川大樹】クーデターで実権を握ったミャンマー国軍が支配を固める最大都市ヤンゴンで、非暴力の抵抗を続ける若者たちがいる。当局の目をかいくぐり、ゲリラ的なデモを繰り返すグループ「OCTOPUS(オクトパス)」だ。匿名で取材に応じたリーダーの男性は「海外の人たちには『ヤンゴンは平穏だ』とか『抵抗する人はいなくなった』と思ってほしくない」と訴えた。

◆アウンサンスーチー氏の誕生日に…

6月19日、ミャンマー・ヤンゴンで、アウンサンスーチー氏を意味する「SUU」と書かれたバナーを掲げる女性=OCTOPUS提供、女性の左上は同グループのマーク

 拘束が続く民主化指導者アウンサンスーチー氏の79回目の誕生日を迎えた6月19日。交流サイト(SNS)上に、ヤンゴンの道路沿いで、赤地にスーチー氏を表す「SUU」の文字とバラが描かれたバナー(旗)を掲げたマスク姿の女性の写真がアップされた。  国軍の支配下にあるヤンゴンではデモは徹底的に弾圧され、市民は自由に物を言えない状況が続く。特にスーチー氏の誕生日のような記念日は警備が一段と厳しくなるにもかかわらず、オクトパスはこの日、複数の場所でゲリラ的なデモを敢行した。デモの時間は数十秒だが、それでも命懸けだ。

◆1年かけて計画「民主主義をあきらめない」

 オクトパスはクーデター直後の2021年2月末に設立された。8本の足を持つタコのように、世界中にネットワークを広げたいとの思いを込めて名付けたという。現在のメンバーは計10人で、いずれも20代。誰かが捕まったときに芋づる式に逮捕されないよう、お互いに素性はほとんど知らない。これまでに14人が扇動罪などで逮捕され、ヤンゴンのインセイン刑務所などに収監されている。  この日のデモは1年かけて計画を練った。実の親も気付かないような変装をし、移動手段なども慎重に検討した。リーダーの男性は言う。「ヤンゴンではバラの花を持ったり、バナーを掲げただけで逮捕される。罪を決めるのは軍だ。私たちは独裁者を受け入れず、民主主義をあきらめない」 

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