「外国の代理人」法案の成立に向けた議会採決に抗議してトビリシの議会前に集まった市民ら(5月28日)=ロイター

旧ソ連南部のジョージア(グルジア)で、外国から一定以上の資金提供を受ける団体やマスメディアの登録を義務付ける法律が施行された。「外国の代理人」法と呼ばれ、政府が市民社会を圧迫する懸念が出ている。民主化を決して後退させてはならない。

政府は新法の目的を、外部からの干渉を抑え、国の政治や経済、社会システムを強固にすることだと説明する。だが同様の法律はロシアで2012年に制定され、反政権派の活動を封じ、人権を抑圧する道具として利用されてきた。

ジョージアの法案も野党が「ロシア法」と反発し、大規模な抗議運動が続いた。にもかかわらず、大統領を含む反対勢力や欧米の批判を無視し、与党が議会での採決を強行したのは残念だ。

背景には今秋の議会選を前に、野党勢力の活動や異論を抑え込む与党の思惑も指摘されている。政治目的で言論の自由が妨げられることがないよう、政府は新法の運用に慎重を期してほしい。

ジョージアでは03年、激しい抗議運動で当時のシェワルナゼ大統領を辞任させる「バラ革命」が起きた。今年も議会選を前に再び社会の緊張が高まる懸念があるが、与野党とも過激な街頭活動に走らず、公正に選挙を実施すべきだ。

新法に関し、米国はジョージアに制裁を科す可能性に言及した。欧州諸国も厳しく非難した。23年末に欧州連合(EU)加盟候補国となったジョージアは、新法を乱用すれば悲願のEU入りが遠ざかることを認識する必要がある。

ジョージアはロシアやアジア、中東、欧州に挟まれた「文明の十字路」に位置し、その民主化は国際的にも重要だ。権威主義に傾けば、中国と関係を強化し、ロシアに再び近づく恐れがある。

日本も無関心ではいられない。カスピ海沿岸からジョージアを経由してトルコに至る石油パイプラインの事業には日本企業も参画する。日本政府も民主化路線と内政の安定を堅持するよう促してもらいたい。

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