【ロンドン=大西康平】天然ガス価格が上昇している。イランとイスラエルの対立が激化すれば、液化天然ガス(LNG)輸出の主要航路のホルムズ海峡を通じた供給が途絶えるとのリスクシナリオが意識される。
英LSEGが算出する、欧州の天然ガス指標のオランダTTFの翌日渡し物価格は17日、一時1メガワット時あたり33ユーロ台後半を付けた。終値ベースで2024年1月以来、約3カ月半ぶりの高値となった。
イランは世界のLNG輸送の約2割を占めるホルムズ海峡に面し、報復として通航を妨げる懸念が出ている。同海峡は埋蔵量が世界第3位のカタールのあるペルシャ湾の出口で、13日には近辺でイスラエル関連の貨物船の拿捕(だほ)が伝わった。
エネルギー調査会社ライスタッド・エナジーのアナリスト、ルミン・パン氏は「カタールやアラブ首長国連邦(UAE)による供給を左右する重要な場所だ。米国が対立激化の回避に動いており現時点では途絶の可能性は低いが、市場参加者は注視せざるを得ない」と分析する。
業界団体GIEによると、欧州全体の天然ガス貯蔵率は24年4月15日時点で6割強と、23年の同時期の6割弱を上回り、暖房で消費が増える冬も超えた。ただロシアのウクライナ侵略後の22年8月には1メガワット時あたり340ユーロ強まで上昇した経緯から、投資家はリスクシナリオに敏感な面がある。
価格上昇が続けば、世界のインフレ懸念を再燃させ、中央銀行の利下げ開始の後ろ倒しといった波乱要因になりかねない。
欧州の原油指標の北海ブレントは1バレル90ドル付近で高止まりを続ける。欧州中央銀行(ECB)は24年の原油価格を約80ドルと想定する。市場がメインシナリオとして受け止めた6月利下げ開始も揺らぐ可能性もある。
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