アフリカ北東部スーダンで昨年4月に始まった国軍と準軍事組織「即応支援部隊」(RSF)による紛争で、1千万人近くの人が家を追われている。絶望的な状況が続くなか、日本への思いを抱えるスーダンの人たちもいる。

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 エジプトの首都カイロ。スーダン人たちが身を寄せ合って暮らす地区にあるカフェで、シャファクさん(29)はペンを取った。私が差し出したノートに、勢いよく「やまいだれ」を書き、その中に「心」と書いたところで手が止まった。「『癒やし』という言葉を書きたかったんだけど……」。日本語で「ダメですね」とつぶやいたシャファクさんの残念そうな表情が印象的だった。

 シャファクさんは昨年5月、戦火を逃れて隣国エジプトへと避難してきた。家も財産も失い、命からがら砂漠を越えて逃げてきた。幼い頃から日本に興味を持ち、市民向けの大学講座で日本語を学んだ。多いときは、100人以上が講座にきていたという。

 政情不安で講座がなくなっても、友人たちと週に1回集まり、日本語を教え合っていた。ときに日本人の「ゲスト」を招くこともあった。

 国際NGO「日本国際ボランティアセンター」(JVC)のスーダン事務所で活動する今中航さん(35)は、その「ゲスト」の一人だった。今中さんは、昨年5月に一度退避した後、活動の場所を比較的安全な東部のポートスーダンに移している。

 「ポートスーダンでも日本語で話しかけられることがあるんですよね」。今中さんは、そう明かす。日本に住んだことがある人や、独学で日本語を学ぶ人もいるという。

 「市民の大半は、日本人と同じように戦争をしたくて生きているわけではない。普通の日本が好きな人たちまでもが戦争に巻き込まれている。彼らのためにも、『忘れられた紛争』にしてはいけない」(カイロ=今泉奏)

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