天皇皇后両陛下が28日、英オックスフォード大ベーリオール・カレッジを訪問する。皇后雅子さまが皇室入りする前の1988~90年、外務省の在外研修で学んだ地だ。当時から交流を続ける恩師たちは、再会を心待ちにしている。

 「優れた能力があるだけではなく、ユーモアのセンスもあった。物静かだったが、機知に富んだ発言や活発なやりとりを好んでいた」

 著名な国際政治学者、アダム・ロバーツ名誉教授(84)は振り返る。授業で毎週顔を合わせた皇后さまは、20人ほどのクラスになじみ、精力的に勉学に励んでいた。

 特に、日米間の次期支援戦闘機(FSX)をめぐる交渉について興味をもっていたという。

 留学中から「皇太子妃候補」と騒がれていた皇后さま。ロバーツさんは一度、皇后さまからメディアの取材について相談を受けたという。

 ただ、「私には何も言わないでください。どこに住んでいるかも、皇太子さまのことも」と返した。皇后さまはただ、笑っていた。

 皇后さまの婚約について知った時は「とてもうれしかった」。それと同時に、「彼女が身を捧げてきたキャリアが終わってしまうのではないか」という心配も抱いた。

 皇后さまの留学中、生活一般の「チューター」(指導役)を担っていたのは、医学者のデニス・ノーブル名誉教授(87)だ。皇后さまについて「英語が上手で、生き生きとしていた」と語る。外向的で、人との交流を大事にしていたという。

 ノーブルさん自身も、皇后さまと交流を続けてきた。日本を訪れる度に連絡を入れると、必ず「いつでもいらしてください」と言ってくれ、同じくオックスフォード大に留学経験のある天皇陛下とも交流してきた。10年ほど前に東京を訪れた際には、長女愛子さまにも会った。

 「友人に会うかのように、私を歓迎してくれるのです。このように扱ってくれるのは、両陛下ともに、学生時代の思い出を大事にしているからなのでしょう」

 ノーブルさんは日本のおける人間関係が儀礼を重んじる「フォーマルな」ものであるのに対し、英国では飾らない「インフォーマルな」側面を見せてもかまわないこともまた、両陛下は心地よく思っているのではないかと推測する。

 最後に会ったのは、新型コロナウイルスの感染拡大前だった。28日の再会は、実に6年ぶり。「お元気ですか」。なによりもまず、日本語でそう声をかけたいという。(オックスフォード=藤原学思)

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