【ワシントン=浅井俊典】トランプ前米政権で駐日大使を務めた共和党のハガティ上院議員(64)が本紙のインタビューに応じた。トランプ前大統領が11月の大統領選で返り咲いた場合に何が起きるか予測する「もしトラ」という言葉が日本で広まっていることについて、米国や国際社会に混乱をもたらすといった「誤った形で受け取られている」と述べ、返り咲いても「日米の強固な関係は継続される」と強調した。

◆トランプ政権で駐日大使を務めたハガティ氏

 ウィリアム・ハガティ氏 1959年8月、米南部テネシー州生まれ。ボストンコンサルティンググループ勤務時に約3年間、東京に駐在。ブッシュ(父)政権下のホワイトハウス勤務などを経て、投資会社を創設した。テネシー州経済地域開発局長を務めた後、2016年の大統領選でトランプ氏の陣営に参加。17年8月~19年7月に駐日大使を務めた。

 ハガティ氏は2016年大統領選でトランプ陣営に加わり、トランプ政権発足後に駐日大使を務めた。米メディアは、トランプ氏の副大統領候補の一人に挙がっている、と報じている。

米ワシントンの上院議員会館で、保守層の変化などについて語る共和党のハガティ上院議員=浅井俊典撮影

 ハガティ氏は「トランプ氏が進めるのは強い米国への回帰で、日本が本来必要としているものだ」と指摘。中国の威圧的な行動や北朝鮮、ロシアの動きを念頭に「日米がさらに緊密に協力し、インド太平洋地域全体に安定をもたらす必要がある」と訴え、「『もしトラ』が日本で安心感を与える言葉になることを願っている」と述べた。  トランプ氏が民主党のバイデン大統領と競り合うほど支持を広げたのは「長い間、見過ごされ、エリートから見下された人たちに直接語りかける手法がうまくいっているからだ」と強調。民主党に対しては「都市部の人々が関心のある問題にばかり焦点を当て、平均的な米国民を遠ざけている」と批判した。インタビューは18日、ワシントンの上院議員会館で行った。   ◇  ◇  前駐日米大使のハガティ上院議員との主なやりとりは次の通り。

◆強力な日米同盟には大きな継続性

—トランプ前政権からバイデン政権に移行し、日米関係はどう変わったか。  「継続性の方が大きい。トランプ氏は日本、米国、オーストラリア、インドによる協力枠組みのクアッドを活性化させ、バイデン大統領がその協力関係をさらに進めている。強力な日米同盟には大きな継続性があり、共和、民主の垣根を越えた超党派の支持がある」

米ワシントンの上院議員会館で取材に応じる共和党のハガティ上院議員=浅井俊典撮影

—日本ではトランプ氏が再び大統領になった場合の「もしトラ」という言葉が話題を呼んでいる。  「『もしトラ』という言葉は日本で間違った形で受け取られていると思う」

◆バイデン政権で中国は攻撃的になった

—どういうことか。  「トランプ政権の1期目を振り返ってみてほしい。彼が行ったのは、インド太平洋地域における米国の強い姿勢の回復だった。結果として北朝鮮情勢は落ち着きを取り戻した。日本が本来必要としているのは、トランプ氏が進める強い米国への回帰のはずだ。『もしトラ』が日本で安心感を与える言葉になることを願っている」 —トランプ氏が返り咲いた場合、日米関係にどのような変化が起こるのか。  「トランプ政権の時よりも中国ははるかに攻撃的で、北朝鮮やロシアの動きも活発だ。バイデン政権の4年間でインド太平洋地域ははるかに危険になった。日米はさらに緊密に協力しなければならない」  「私が日本の友人たちに複数の分野で協力の機会を模索するよう勧めている。エネルギー政策を含めた経済協力の継続は非常に重要だ。中国や北朝鮮の脅威に対処するため、米軍と自衛隊による多くの共同訓練や技術協力も期待される。外交面では、あらゆる多国間組織と協力し、主導権を握ろうとする中国に対抗する必要がある」

◆「米国第一主義」は論理的

—国際社会では、トランプ氏の掲げる米国第一主義を懸念する声が上がる。  「『強い米国』が米国第一主義の出発点だ。米経済を強化し、それを基盤に強い軍事力が生まれ、軍事力を背景にした強い外交姿勢も確立される。論理的で順を追ったものだ」  「バイデン政権のアプローチはこれとは逆で、米国経済を弱体化させ、米軍は攻撃能力より性的少数者の権利に重点を置く。外交では米国の立場を表明するだけだ」

◆エリートが見下す人々からのうねり

—トランプ氏の登場で共和党の保守層に変化が生じたと言われている。  「多くの人たちが保守層に加わるうねりが起きた。トランプ氏が、これまで忘れ去られ、見過ごされてきた人々に語りかける方法を見つけたからだ。私は南部テネシー州出身だが、東海岸や西海岸の大都市エリートたちはテネシーや米中央部に住む人たちを見下してきた。ワシントンのエリートやメディアが物事はどうあるべきかと説くのを聞かされるのには疲れた。トランプ氏はそうした人たちに手を差し伸べ、『私はあなたたちのために立ち上がる』と語りかけたのだ」 —民主党はどうか。  「民主党は都市部の人々が関心のある問題に焦点を当てるばかりで、平均的な米国人たちを遠ざけているのではないかとの懸念が生まれている。民主党は米国の主流派を失いつつある」 

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