◆「億万長者」を「兆万長者」、「5000億ドル」を「5億ドル」と言い間違い
演説するバイデン氏(2020年2月)
「彼(バイデン氏)が何を言ったのか分からない。きっと彼も分かっていないだろう」。約90分に及んだ討論で、言い間違いが目立ったバイデン氏を、トランプ氏はこうやゆした。 か細く、つぶやくような声、ときおり浮かべるうつろな表情。バイデン氏は討論の序盤、明らかに精彩を欠いていた。「億万長者」と言いたかったところを「兆万長者」、「5000億ドル」を「5億ドル」と言うなど、何度も口ごもった。 討論も半ばを過ぎたところで、陣営関係者が「バイデン氏は風邪をひいている」と米メディアにあわてて説明した。後半は何とか立て直し、議会襲撃事件で根拠のない主張を繰り返すトランプ氏を「このステージで唯一、有罪評決を受けた重罪人だ」と畳みかけてやり返したものの、序盤につまずいて「自滅」した形。米ニュースサイト、ポリティコは、民主党関係者から「ひどい」「バイデンではだめだ」と危ぶむ意見が出始めたと伝えた。◆異例の討論会、双方の思惑が一致
演説するトランプ氏(2020年1月)
民主、共和両大会で党候補が正式指名される前に実施された異例の討論会。テレビ中継された討論会では最も早い時期の舌戦を両氏が受け入れたのは、双方の思惑が一致したからだ。 高齢不安を払拭できないバイデン氏と陣営は、今回の討論会を「大統領選の本格スタート」と位置付け、力強い姿を見せて2期目の職務も全うできるとアピールする狙いがあった。トランプ氏にも、早期の直接対決でバイデン氏をたたき、支持率が拮抗(きっこう)する選挙戦で優位に立ちたいとの考えがあった。 バイデン氏は大統領山荘キャンプデービッドに1週間こもって準備を重ねたが、本番で力を発揮できなかった。トランプ氏は、バイデン氏とは対照的に精力的な受け答えを見せたものの、司会者の質問に答えずに自説を展開。「犯罪や移民問題でいつもの誇張や虚偽に満ちていた」(ワシントン・ポスト紙)と報じられるなど、不規則発言も多かった。◆CNN調査で「トランプ氏勝利」は67%
CNNの討論会直後の世論調査によると、「バイデン氏勝利」と評価する回答は33%、「トランプ氏勝利」は67%だった。 米アクロン大のミッチェル・マッキニー教授は「バイデン氏が惨敗し、トランプ氏が勝った」と指摘。「トランプ氏は彼特有の攻撃スタイルで現職大統領を嘲笑し、バイデン氏はどう反応していいか分からないように見えた」と述べる。米ホワイトハウス
今回の低調なパフォーマンスを受け、バイデン氏に対して民主党から選挙戦からの撤退を求める圧力が高まる可能性も出てきた。 ミシガン大ディベート研究所のアーロン・コール所長は「次の討論会は9月で、バイデン氏は挽回の機会をすぐには得られない。年齢的な懸念は高まり、民主党にとって頭痛の種になるだろう」と指摘した。 鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。