【パリ=北松円香】日本や米国などが参加する国際熱核融合実験炉(ITER)の稼働時期が、従来計画の2025年から早くとも33年に先送りになった。計画の遅延や不具合のあった部材の修理に伴い、費用もこれまでの想定より50億ユーロ(約8700億円)ほど増えるという。仏AFP通信などが伝えた。
3日の記者会見でITERのバラバスキ機構長が、16年に策定された計画の大幅な遅延を明らかにした。仏紙レゼコーによると、総事業費は遅延などを受けて250億ユーロ近くに達する見通しだ。
バラバスキ氏は会見で「目的達成のための正しい判断だと考えている。リスクにさらに注意を払い、プロジェクト全体の遅れを最小限に抑える」と説明した。
ITERには日本、欧州連合(EU)、米国、ロシア、韓国、中国、インドの「7極」が参加し、仏南部で建設を進めてきた。6月下旬の理事会で計画の見直しが了承されたという。
核融合発電は原子核同士が融合する際の膨大なエネルギーが生じる反応を使って発電する技術だ。燃料の重水素は海水に含まれることから資源リスクが少なく、発電時に二酸化炭素(CO2)を出さない。原子力発電に比べて使用済み核燃料の放射能レベルが低く暴走事故も起こりにくいため、安全性が比較的高いとされる。
核融合の反応を起こす方法として、磁場で高温のプラズマを閉じ込める「トカマク式」と、レーザーを燃料に照射する「レーザー方式」がある。ITERはトカマク式の実験炉だ。
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