当選した改革派のペゼシュキアン元保健相(5日)=AP

イラン大統領選は5日の決選投票の結果、米欧との協調を唱える改革派のペゼシュキアン元保健相が当選した。米欧と対立を深めた前任のライシ師と同じ保守強硬派の候補を破った。新政権は米欧と真摯な対話を重ね、制裁解除を探らなければならない。

国政全般の決定権を握るのは最高指導者ハメネイ師であり、大統領は行政権の長だ。ペゼシュキアン氏の意向が通るとは限らない。

しかし知名度の低い同氏を大統領に押し上げたのは、変化を求める民意だ。無視すべきではない。保守強硬派は米欧との対立をいとわず、イラン経済は米国の制裁で疲弊した。国民は物価高や失業に苦しんでいる。

米欧もイランの大統領交代を対話の好機と受け止めるべきだ。2015年の核合意で、イランは核開発を制限する見返りに米欧から制裁緩和を引き出した。だが18年に当時のトランプ米政権が一方的に離脱し、核合意は機能不全に陥った。

反発するイランはウラン濃縮を進めている。核兵器開発につながるとの懸念を払拭するためにも、意思疎通は重要だ。

内政では保守強硬派が主導する強権的な統治に国民がうんざりしていた点も見逃せない。女性が髪を覆うスカーフ「ヒジャブ」着用を巡る抗議デモが22年に広がると、ライシ政権は力で抑え込んだ。新政権にはこうした締め付けの緩和も期待される。

今回の大統領選は、ライシ師がヘリコプター墜落で5月に死亡したのを受けた急な選挙だった。準備期間が限られたにせよ、投票率の低さは際立つ。1回目は40%と過去最低だった。決選投票も約半数の有権者が投票に足を運ばなかった。

浮かび上がるのは有権者の無関心であり、現体制への不信ではないか。指導部は冷めた民意を直視する必要がある。隠然たる影響力を持つ保守強硬派が、改革派の新大統領の足を引っ張るような挙に出るなら、逆効果だ。

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