中華麺にうどんのスープを組み合わせた「素ラーメン」。今から70年ほど前に終戦直後の鳥取市で生まれ、今も市民に愛されています。この「素ラーメン」が、海外に進出し、インドネシアのラーメン店で提供されることになりました。

透き通った黄金色のスープに鳥取県産の小麦でできた自家製の麺。そこに天かす、もやし、かまぼこをトッピング…その名も「素ラーメン」。創業から110年を超える歴史を持つ鳥取市の武蔵屋食堂の看板メニューです。

杉谷紡生記者
「スープはうどんのだしのような香りですね。とてもさっぱりしていますが、かつおぶしのだしがしっかり効いていて、お酒を飲んだ後に食べたくなる味ですね」

シンプルな見た目のごく普通のラーメンのようですが…スープはかつおべースの「うどんだし」。麺はラーメン、スープはうどんという、ありそうでなかった組み合わせです。
第二次世界大戦の終戦直後の食糧難の時代に、武蔵屋食堂の2代目主人が、「安くておいしいラーメンを食べてほしい」という思いから、うどんスープのラーメンを考案。「素ラーメン」と名付け提供を始めました。
登場から約70年が経った今も1杯550円と手ごろな価格で提供、懐にもやさしい市民の味として親しまれています。そんな鳥取の味が海外進出を果たすことになりました。

武蔵屋食堂四代目・吉村泰行さん
「ひょんなことから人伝いにインドネシアのロニーさんという方に素ラーメンが届いて、非常に気に入っていただいて、去年からラブコールをいただいた」

進出先はインドネシア!日本生まれで、現地で飲食店経営などを手がける事業家のロニー・パーツさんが、日本の友人からもらった「素ラーメン」のおいしさに感動。新たに作るラーメン店で提供したいと連絡してきたそうです。

ロニー・パーツさん
「初めて食べた時に和風のだしのほのかな甘みが、自分の知っているラーメンとは全く異なっていて、こんなラーメンがインドネシアにあっても良いと思った」

店を構えるのは、首都・ジャカルタの近く、人口約230万人のタンゲラン市。4月下旬のオープンを目指しています。ロニーさんは吉村さんと連絡を取りながら、約2か月かけてインドネシア版の「素ラーメン」を開発。うどんのだしに中華麺という基本を守りながら、なるとやキャベツなど、現地でも調達できる食材を使ってインドネシアの人たちの好みに合うようアレンジ。2種類の「素ラーメン」を用意しました。また「安くておいしいラーメンを」という思いも受け継ぎ、1杯約190円、一般的な日本のラーメンの現地価格の4分の1から5分の1ほどで提供することにしました。

ロニー・パーツさん
「より多くの方に日本で守ってこられた食文化が広がり、鳥取県の認知につながって小さな架け橋になれたらと思います」

武蔵屋食堂四代目・吉村泰行さん
「インドネシアの方が鳥取を知っていただいて、武蔵屋食堂に来ていただいて本店の素ラーメンを食べていただける。そういった形が1番理想ですね」

市民のソウルフードが鳥取とインドネシアの懸け橋に。武蔵屋食堂の素ラーメンを提供するロニーさんのラーメン店は、4月下旬にオープンする予定です。

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