目次

  • ロシアの大規模ミサイル攻撃 防空システム回避する新戦術か

  • キーウ小児病院被害を受け国連安全保障理事会で緊急会合

【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(7月9日の動き)

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ウクライナ情勢 ロシアによる軍事侵攻 最新情報・解説 - NHK特設サイト

NATOの首脳会議 11日にかけワシントンで

NATOの首脳会議は、9日から11日にかけてワシントンで開かれます。現地ではまもなく創設から75年の節目を迎えた記念の式典が行われ、開催国・アメリカのバイデン大統領が演説し、ロシアによるウクライナ侵攻が続く中、NATOの存在意義と加盟国の結束の重要性を訴えるものとみられます。

これに先立ち、NATOのストルテンベルグ事務総長が演説し「強力な防衛産業なくして力強い防衛を提供する方法はない」と述べ、ウクライナで弾薬が不足してきたことを踏まえ、加盟国や友好国の防衛産業どうしの協力強化の重要性を強調しました。

NATOによりますと、今回の会議では、ウクライナへの軍事支援を強化するため、NATOの役割を拡充し、兵器の供与やウクライナ軍兵士の訓練について加盟国間の調整を担うことや資金確保に向けた取り組みについて合意する見通しです。

ヨーロッパでは、NATOのあり方を見直す考えを示してきたトランプ氏が秋の大統領選挙で返り咲いた場合、NATOの結束への影響を懸念する声も出ています。

一方、自身の年齢に対する不安が広がる中、バイデン大統領が首脳会議で議論をリードし、指導力を示すことができるのかも注目されています。

ゼレンスキー大統領 ワシントンに到着

ウクライナのゼレンスキー大統領は、NATOの首脳会議に出席するため、9日、アメリカの首都ワシントンに到着しました。

ゼレンスキー大統領は記者団に対し、ロシア軍が8日に大規模なミサイル攻撃を行い、首都キーウの小児病院などに大きな被害が出たことを念頭に「今回の事態を受け、バイデン大統領をはじめとする各国の首脳は、これまでよりも力強く、断固とした姿勢で臨むことができると思う」と述べ、防空システムの支援などについて議論の進展に期待を示しました。

ロシアの大規模ミサイル攻撃 防空システム回避する新戦術か

ウクライナの警察当局は9日、ロシア軍が8日に各地に行った大規模なミサイル攻撃で、首都キーウの小児病院などに大きな被害が出て、これまでに42人が死亡し、190人がけがをしたと発表しました。

今回の攻撃について、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は、ロシアのミサイルが50メートルほどの低空を飛行したと指摘されていることを受けて、ロシア軍がウクライナ軍の防空システムを回避する新たな戦術を使った可能性が高いと分析しています。

一方、ロシアでは国民的歌手で、ヒット曲「百万本のバラ」を歌ったことで知られるアーラ・プガチョワさんが9日、自身のインスタグラムに、顔などに傷を負った子どもの写真を投稿しました。

プガチョワさんは写真とともに「神は忍耐強いが、すべてのことには限度がある」というメッセージも投稿し、小児病院などへの攻撃を批判したものと受け止められています。

キーウ小児病院被害を受け国連安全保障理事会で緊急会合

ロシア軍がウクライナ各地に大規模なミサイル攻撃を行い、首都キーウの小児病院などに大きな被害が出たことを受けて、国連安全保障理事会で緊急会合が開かれました。欧米などからは民間施設を狙った国際人道法違反だと非難する意見が相次ぎましたが、安保理の議長国を務めるロシアは小児病院に落下したのはウクライナ軍のミサイルだと反論しました。

今月ロシアが議長を務めている安保理で9日、フランスなどの要請でウクライナ情勢をめぐる緊急会合が開かれました。

はじめにキーウで大きな被害を受けた小児病院の医師がオンラインで当時の状況について報告し「子どもも大人も悲鳴をあげ恐怖と痛みで泣き叫び、まるで地獄だった。今回の攻撃は医療を必要とする子どもたちに長期的で深刻な影響を及ぼすだろう」と述べました。

このあと欧米など各国からは、病院や学校などの民間施設への攻撃は国際人道法違反だとして強く非難する意見が相次ぎました。

このうちフランスのドリビエール国連大使は「ロシアは意図的に住宅地や医療施設を標的にしている。ロシアが責任を問われる新たな戦争犯罪だ」と指摘しました。

またアメリカのトーマスグリーンフィールド国連大使は、安保理議長国のロシアが原因で緊急会合が開かれたことに不快感を示した上で「ロシアは白昼堂々と小児病院を攻撃し子どもたちを傷つけた。口にするだけで背筋も凍る」と非難しました。

これに対してロシアのネベンジャ国連大使は、ロシア軍は軍事施設のみを攻撃の標的にしていて、小児病院に落下したのはコントロールを失ったウクライナ軍の防空ミサイルだと反論しました。

プーチン大統領とインドのモディ首相 首脳会談

ロシアのプーチン大統領は、9日、ウクライナ侵攻後、初めてロシアを訪問したインドのモディ首相とクレムリンで会談し、経済や防衛、教育などの幅広い分野で協力を強化していくことで一致しました。

ウクライナ情勢についても話し合われ、会談の冒頭、プーチン大統領は「ウクライナ危機を解決する方法を見出そうとしていることに感謝している」と述べました。

これに対し、モディ首相は「罪のない子どもの命が失われていることに心を痛めている。平和が不可欠で戦場には解決策はない」と述べ、懸念を伝えましたが、ロシアに対する直接的な批判は避けました。

また、会談で両首脳は、ウクライナ情勢の平和的な解決は外交ルートを通じ、ロシアとウクライナ双方が参加した形で行われなければならないと強調しました。

プーチン大統領としては、ウクライナ侵攻をめぐって欧米との対立が激しくなる中、グローバル・サウスの代表格であるインドとの協力関係をアピールすることで、NATO=北大西洋条約機構の首脳会議を前に欧米をけん制した形です。

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