「ペンギンと卵」(Arp 142)は2つの銀河が構成する天体だ=NASA提供

【ワシントン=赤木俊介】米航空宇宙局(NASA)は12日、世界最大の宇宙望遠鏡「ジェームズ・ウェッブ(JWST)」の本格稼働から2年経ったことを記念し、新たな観測画像を公開した。画像には卵を抱くペンギンにそっくりな天体、Arp 142が映し出されている。

JWSTは老朽化したハッブル宇宙望遠鏡の後継として21年12月に打ちあがり、22年7月に初観測に臨んだ。これまで銀河同士の衝突によって誕生する恒星の様子や、観測史上最古と思われるブラックホールを発見するなど、運用から2年間で宇宙研究に大きく貢献してきた。

ハッブル宇宙望遠鏡が撮影したArp 142の画像㊧とJWSTの画像の比較=NASA提供

NASAのビル・ネルソン長官は同日、声明で「バイデン大統領とハリス副大統領が2年前にJWSTが観測した最初の画像を公開して以来、JWSTは継続的に宇宙の謎を紐解いてきた」とJWSTの成果を強調した。

今回公開された画像に映し出されたArp 142は地球から3億2600万光年離れており、うみへび座に位置する。右側の「ペンギン」(NGC 2936)は渦巻銀河で、「卵」(NGC 2937)は楕円銀河に分類される。2つの銀河が構成する天体は「ペア銀河」とも呼ばれる。

JWSTの中間赤外線観測装置(MIRI)がとらえたArp 142=NASA提供

米宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)によると、それぞれの銀河の質量は同等程度で、ペンギンと卵の距離は10万光年ほどだ。互いの重力が作用することでガスやちりなどの物質が圧縮され、ペンギン内では年に100〜200個程の恒星が誕生するという。星形成のペースは年に6〜7個の恒星が誕生する天の川銀河を大きくしのぐ。

ペンギンと卵の接近は2500〜7500万年前に始まった。数億年後には衝突し、1つの銀河となると思われる。

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