【ニューヨーク=竹内弘文】15日の米株式市場でダウ工業株30種平均が前週末比210ドル(0.5%)高の4万0211ドルで引け、約2カ月ぶりに史上最高値を更新した。13日のトランプ前大統領への銃撃事件で受け、市場ではトランプ氏再選を意識したトレードが目立った。財政拡張や規制緩和の恩恵を得られそうな銘柄にマネーが向かった。

ダウ平均は5月17日に4万ドルを突破したが高値を維持できず、同月末には3万8000ドル台前半まで下げていた。その後インフレ圧力の和らぎを示す物価指数の発表で早期利下げ期待が再び浮上し、前週末12日には再び4万ドル台に乗せていた。15日の続伸を後押ししたのはトランプ氏のリード拡大だ。

政治イベントの予想に賭けるサイト「プレディクト・イット」で、大統領選の勝者をトランプ氏とする予想確率は15日時点で69%となり、バイデン氏勝利予想を43ポイント上回った。差は12日時点から10ポイント拡大した。銃撃事件で共和党の結束を一段と固めたトランプ氏に追い風が強まったとの見立てだ。

15日のダウ平均採用銘柄の上昇率ランキングでは、建機大手のキャタピラー(3.0%高)が首位となった。米銀大手のゴールドマン・サックス(2.6%高)やJPモルガン・チェース(2.5%高)、石油大手のシェブロン(1.6%高)といった銘柄が上位に並んだ。S&P500種株価指数の業種別指数でも「エネルギー」が首位で、「金融」と「資本財」が続いた。

「トランプ氏の政策運営を予測するうえで、2017〜21年のトランプ政権の実績を信頼できる手引書として投資家は注目している」。英キャピタルエコノミストの副チーフ市場エコノミスト、ヨナス・ゴルターマン氏は説明する。

トランプ氏が選挙公約に掲げる共和党の綱領案では、17年に導入し25年末に期限を迎える「トランプ減税」の恒久化を盛り込んだ。財政政策による景気刺激が意識され、建機など景気敏感株が買われやすい。エネルギーや金融業界に対する規制の緩和観測も関連銘柄の株価を押し上げた。

債券市場でもトランプトレードは進行する。財政リスクが高まるとの見方から長い年限の米国債利回りに上昇(債券価格は下落)圧力がかかった。米長期金利の指標である10年債利回りは一時、前週末比0.07%高い4.25%に上昇し、30年債利回りは同0.09%高い4.48%まで上げる場面があった。

ドイツ銀行のマシュー・ラスキン氏らは15日朝のメモで「トランプ氏優勢とみられた討論会後の市場反応を基に試算すると、今後数日間のうちに長期金利は0.15%程度上昇する可能性がある」と指摘していた。

トランプトレード主導の株高の持続性については懐疑的な見方もある。米証券ミラー・タバックのマシュー・マリー氏はトランプトレードよりも「企業業績の方が(相場動向にとって)重要だ」と述べ、相場一段高のためには業績予想の切り上がりが必要だと説明していた。

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