アメリカの大統領選挙に向けた共和党大会が最終日を迎え、トランプ前大統領が大統領候補への指名を受諾する演説を行いました。

フジテレビ・立石修解説委員室長が注目した2つのポイント、「際立った演出力」と「“バイデン口撃”控えめ?」について詳しく聞いていきます。

──1つ目の「際立った演出力」については?
演説の冒頭、先日の銃撃事件について「辛くて話せない」と言いながらも、結局は20分近く話しました。
中身も「ヒュッという音がして、右耳に何かが強く当たるのを感じた」と、我々が関心を持ってしまうディテールについて細かく話していて、言い方はあれですが、引き込まれていくような内容でした。

そして、クライマックスでは、亡くなった消防士の制服を壇上で紹介して祈りを捧げ、一気に会場の気持ちを1つにまとめていく感じでした。
共和党の党大会としては大成功、100点満点に近いといっていいかと思います。

続いて、もう1つの注目ポイント「“バイデン口撃”控えめ?」について見ていきます。

果たして本当にバイデン氏への口撃は控えめだったのでしょうか。

今回の演説でバイデン大統領の名前を初めて出したのは、トランプ氏の演説が30分以上経ったころでした。

「きょうはこの名前は一度しか口に出さない」と強調したうえで、「史上最悪の大統領10人合わせても、バイデンがこの国に与えたダメージは超えられない」と批判しました。

前半に関しては、これまでのような人格攻撃のような表現は消え、どちらかというと全体的にソフトな口調だったと各国メディアも論評しています。

──強い口調の「史上最悪の大統領」というフレーズは差し込んでいたが、なぜ、バイデン氏への口撃が控えめだった?
銃撃事件を経て、これまでの自分を変えていく、より大きな存在であるということをアピールしようとしていたとみられていて、今回の演説でも、バイデンという名前も一度も口にしないというような見方も出ていました。ですが結局、1回バイデン氏の名前を出したあとは、名前は具体的に出さなくても、「彼は」とか「民主党は」という言い方でかなりの口撃を繰り返していました。
確かにソフトな口調ではあったのですが、本質的な部分は変わってはいないのかなという印象を持ちました。

演説では他にもいろいろなことを強調していました。

まずは経済に関して、「EV(電気自動車)推進はやめる」「エネルギーを支配し世界に供給する」「アメリカに自動車工場を作らなければ関税を200%かける」と発言しました。

──これを受けて、トランプ氏が当選したら日本にはどういった影響が出てくる?
「電気自動車の推進はやめる」というあたりは、バイデン大統領が進めてきた政策でもあります。まずトランプ氏は中国というものが念頭にあるので、日本には大きな影響はないのかもしれませんが、この演説の中で言っていたのは、「アメリカの自動車産業を復活させる」ということを声高にトランプさんは叫んでいました。
こうなると、関税など様々な意味で日本に影響が出てくる可能性もあります。
あとは、USスチールの買収の問題ですとか、そちらの方にも影響が出てくる可能性はあります。

さらに外交面については、「金正恩(キム・ジョンウン)氏と仲良くする」「ウクライナ侵攻などは終わらせる」「国境を閉鎖し不法移民の侵略も終わらせる」と発言しています。

──ウクライナ侵攻などについてはこれまでも言及があったが、「金正恩氏と仲良くする」という部分については?
日本としては一番関心のある部分ですよね。トランプ氏は自分は金正恩氏とうまくやっていたと。自分が大統領の時は「ミサイル発射を阻止」したと話していましたが、これは誤解を招く発言です。1回目の首脳会談を行った2018年には、確かに発射は行われませんでしたが、その後、再開された。北朝鮮もアメリカとの直接的な話し合いがうまくいかずに苛立っていた。そういう意味では、今回も事実とちょっと違う部分を入れながら自分の成果をアピールしていると。

──バイデン氏については?
だんだん撤退論が高まっていて、誰が引導を渡せるかがポイントでしたが、民主党の重鎮であるオバマ元大統領が「バイデン大統領が勝つ可能性は極めて低くなっている」と発言していて、これが大きな影響を生みそうです。

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