ロシア中部のエカテリンブルクの裁判所は24年6月にゲルシコビッチ氏の審理を開始した(6月26日)=ロイター

ロシア当局が2023年3月に拘束した米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の米国人記者エバン・ゲルシコビッチ氏について、ロシア中部エカテリンブルクの裁判所は19日、懲役16年の判決を言い渡した。インタファクス通信が伝えた。

検察側はゲルシコビッチ氏が米中央情報局(CIA)の指示で中部スベルドロフスク州にある軍需工場の機密情報を収集していたと主張し、懲役18年を求刑した。ゲルシコビッチ氏は容疑を否認していた。

ゲルシコビッチ氏は23年3月に同州を取材で訪問し、州都のエカテリンブルクで拘束された。スパイ罪で起訴され、24年6月にエカテリンブルクの裁判所は審理を非公開で開始していた。

ゲルシコビッチ氏は仏AFP通信勤務などを経て、22年からWSJのモスクワ支局で勤務を開始した。両親が旧ソ連出身で英語・ロシア語に堪能だという。

米政府や米メディアはロシア当局によるゲルシコビッチ氏の拘束を一貫して非難してきた。WSJは拘束から一年が経過した24年3月、紙面の1面に「彼の記事がここにあるべきだ」と空白を掲載し、拘束に抗議の意を示した。

今後、ゲルシコビッチ氏と外国で収監中のロシア人との拘束者の身柄交換に発展するかが焦点となりそうだ。ペスコフ大統領報道官は19日、ゲルシコビッチ氏と他の人物との交換の可能性についての記者団の質問への回答を避けた。

ロシアは過去に米国と拘束者の交換で合意したことがある。22年12月にはロシアが米女子プロバスケットボールのブリトニー・グライナー選手を、米国がロシアの元軍人で服役中のビクトル・ボウト受刑者をそれぞれ釈放した。ロシア当局は22年2月、グライナー氏が大麻オイルを所持していたとしてモスクワの空港で拘束した。ボウト氏は武器密輸などの罪で服役していた。

プーチン政権が拘束を続けるゲルシコビッチ氏を今後、米国との交渉に政治利用する可能性も考えられる。

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