◆「神に助けられた」…穏やかな口調に聴衆はくぎ付けに
「私は今夜、年齢、性別、民主党、共和党、無党派、黒人、白人、アジア系、ヒスパニックを問わず、すべての国民に忠誠と友情の手を差し伸べる」18日、米ウィスコンシン州ミルウォーキーで、共和党大統領候補の指名受諾演説に臨んだトランプ氏=鈴木龍司撮影
トランプ氏は、穏やかな口調でこう切り出し、同氏を支持する熱狂的な岩盤支持層だけでなく、批判的な有権者にも団結を訴えた。 約90分の演説では、暗殺未遂事件から間一髪で生還した経緯に約15分を割いた。「神に助けられた」と虚空を見つめ、感傷的にささやくような口調で、事件で犠牲になった元消防士への黙とうを呼びかける…。 いつもと違う姿に聴衆はくぎ付けとなり、会場は「宗教的な雰囲気」(ニューヨーク・タイムズ紙)すら漂わせた。米西部ワイオミング州の代議員シェリル・フォランドさん(62)は「素晴らしかった。党の結束は以前より強まっている」と話した。◆その後は「典型的なトランプ氏の演説」
トランプ氏の陣営には、演説によって、憎悪をあおり、社会の分断をいとわないといった印象を一新させる狙いがあった。18日、米ウィスコンシン州ミルウォーキーで、共和党大統領候補の指名受諾演説に臨むトランプ氏=鈴木龍司撮影
ただ、受諾演説史上、最長時間に及んだ演説で、トランプ氏が台本通り進めたのは前半の約30分だけ。 バイデン氏らの批判はしないと陣営が事前に説明していたのに、バイデン氏を「史上最悪の大統領」と呼び、ペロシ元下院議長を「狂ったナンシー」と非難。さらに不法移民が「何十万人の米国人の死につながっている」などと、事実誤認や誇張を繰り返す従来の演説に逆戻りした。 ジョンズ・ホプキンズ大のアダム・シェインゲート教授は「前半を除けば典型的なトランプ氏の演説だった。具体的な政策の話はほとんどなく、移民問題など支持者が求めるメッセージを提供した」と指摘した。◆バイデン氏は窮地
対する民主党は8月19〜22日の党大会を前に、高齢不安が再燃したバイデン氏の撤退を促す動きが加速している。 米紙ワシントン・ポストは、バイデン氏が周囲の説得に応じて近く撤退を決断する可能性があるとの見方をペロシ氏が示していると報道。オバマ元大統領もバイデン氏が11月の大統領選での勝利が難しくなっているとの懸念を周囲に示したとされ、バイデン氏の包囲網は確実に狭まっている。 米メディアはバイデン氏に近い関係者の話として、バイデン氏がこうした撤退圧力に激怒していると報じているが、党内の不安を和らげる方策は見当たらない。 鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。