【ミルウォーキー(ウィスコンシン州)=鈴木龍司】米共和党大会で大統領候補の指名受諾演説に臨んだトランプ前大統領(78)は、自身が負傷した銃撃事件について「凶悪な攻撃にもかかわらず、われわれはかつてないほどの決意とともに団結する」と強調する一方、銃規制には一切言及しなかった。同氏は規制の全面的な撤廃を公約に掲げており、支持者からも賛同の声が相次いだ。

◆全米ライフル協会(NRA)の支援を受けるトランプ氏

18日、米ウィスコンシン州ミルウォーキーで、共和党大統領候補の指名受諾演説に臨み、支持者の歓声に応えるトランプ氏=鈴木龍司撮影

 「暗殺者の弾丸はあと数ミリで私の命を奪うところだった」。トランプ氏は演説で「神のご加護で私は皆さんの前に立っている」と語ったものの、銃規制の是非には踏み込まなかった。  トランプ氏は2017年の大統領就任後、民主党のオバマ政権下で進めた銃規制を撤回する法案に署名するなど、一貫して銃の権利を擁護してきた。豊富な資金力を持つ銃擁護ロビー団体、全米ライフル協会(NRA)の支援を受けており、2月には同協会での演説で「あなたたちの武器に指一本、触れさせない」と支持を呼びかけた。

◆「銃が人を殺すわけではない」「誰にでも自衛権はある」

 銃の擁護派は、合衆国憲法の修正第2条で国民の武器保有権が認められていることを根拠にしている。各州から共和党大会に集まった代議員も「当然の権利」と口をそろえた。  ミズーリ州の代議員を務めるサンディ・カーンズさん(60)は今回の事件を「警備体制の問題」と切り捨て、「銃が人を殺すわけではない。武器を持っている人が、相手を殺すのだ」と語った。  テキサス州のデビッド・バートンさん(70)は「残念だが、暴力を抑止するためには、より大きな力が必要。誰にでも自衛権はある」と訴えた。事件から生還したトランプ氏を神格化する動きもあり、大会の会場には負傷した同氏をまねて右耳にガーゼを巻いたり、シールを貼ったりする支持者がいた。

◆バイデン氏の主張は「規制強化」

 一方、事件の容疑者の男(20)は父親が合法的に所持する半自動小銃を使用したとされる。米国では銃の乱射事件が後を絶たず、規制の強化を進めてきた民主党のバイデン大統領(81)は16日の選挙集会で、殺傷能力が高い銃器の非合法化を主張。選挙戦の争点にする構えだ。  シカゴ大の6月の世論調査では、トランプ氏の当選を阻むために「暴力が正当化される」との回答が1割に上り、逆に同氏の大統領返り咲きのために暴力を支持すると答えた人も7%いた。大統領選が本格化する中、銃の使用を含む政治的暴力が続くことへの不安がくすぶる。 

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