【ワシントン=浅井俊典】「身を引くことが最善だと考えた」。21日のバイデン米大統領の選挙戦撤退表明は、またたく間に国内外に速報された。同氏は2日前、声明で選挙戦継続の意向を示したばかりだった。

◆「上下両院も共和党に取られる」焦り

 米ニュースサイト、ポリティコによると、バイデン氏が撤退を決断したのは20日。決め手となったのは陣営が実施した独自の世論調査の結果だった。

アメリカのバイデン大統領=2022年5月

 それによると、激戦州で劣勢だっただけでなく、伝統的に民主党が強い南部バージニア州や西部ニューメキシコ州でもトランプ氏に引き離され、バイデン氏もこのままでは勝てないと判断したという。  ワシントン・ポスト紙によると、バイデン氏に公然と撤退を求める党所属の連邦議員は約260人中40人近くに上った。大統領選だけでなく、自分の選挙に影響しかねない―。上下両院選ともすべて共和党に奪われるとの危機感が強まり「バイデン氏降ろし」は加速し続けた。

◆「自身で決断」ぎりぎりのタイミング

 判断が長引けば、批判がさらに激しくなるのは必至で、妻ジルさんら家族は大統領としての威厳を保ったままの撤退を模索。バイデン氏が自分の意思で決断したことを示すにはギリギリのタイミングだった。  「決断は容易でなかっただろうが、彼は真の愛国者だ」(党上院トップのシューマー院内総務)。バイデン氏の撤退表明後、党内は手のひらを返すように同氏への称賛であふれた。

トランプ氏=2020年1月

 過去には、1952年大統領選で民主党のトルーマン大統領、68年大統領選でも同党のジョンソン大統領がそれぞれ現職で立候補しながら途中で撤退を余儀なくされ、ともに後継候補が共和党候補に敗れた。

◆トランプ陣営は警戒「ハリスこそ最悪」

 両氏とも撤退は春で、投票まで4カ月を切った今回は最も準備期間が短い。新たな候補は厳しい条件下で選挙戦に臨むことになる。  一方、共和党のトランプ氏の陣営は、バイデン氏が選挙戦を続ければトランプ氏が地滑り的勝利を収めると踏んでいたものの、数週間前からハリス氏の出馬を警戒し、選挙戦略を見直してきたとされる。陣営は21日の声明で「ハリスは米国民にとってバイデン以上の最悪の人物になる」と早速、対決姿勢を鮮明にした。 

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