11月の米大統領選で撤退を表明した民主党のバイデン大統領(81)は、共和党候補のトランプ前大統領(78)と争う後任候補としてハリス副大統領(59)を推薦した。早くも候補者をハリス氏で一本化する動きが加速するが、党員らが投票しない手続きが進めば反発を招くおそれもある。

◆指名されれば2人目の女性候補

 ワシントン・ポスト紙によると、すでに170人以上の連邦議員や州知事らがバイデン氏が推したハリス氏への支持を表明。ロイター通信によると、全50州の民主党委員長もハリス氏を大統領候補として支援する意向を打ち出した。

カマラ・ハリス米副大統領(2022年9月)

 ハリス氏が党候補に指名されれば、2016年の大統領選を戦ったヒラリー・クリントン元国務長官以来、2人目の女性候補となる。ハリス氏は初の黒人、アジア系副大統領として知名度が高く、党内で候補者の差し替え論が浮上した直後から最有力候補と位置づけられてきた。

◆前回は党候補争いから撤退

 インド系の母とジャマイカ系の父を持つハリス氏は、西部カリフォルニア州の司法長官や上院議員を歴任した。20年の大統領選では党候補争いに名乗りを上げたが、支持が広がらず、早々に撤退、バイデン氏から「ランニングメート(伴走者)」の副大統領候補に指名された。  副大統領就任後は、国民の関心が高い不法移民対策の中心を担ったが、目立った成果を上げられず、世論調査の評価も低迷した。

トランプ氏(2020年1月)

 ただ、最近は人工妊娠中絶の権利擁護キャンペーンの先頭に立ち、若者や女性の支持を拡大している。

◆無党派の支持率では有利

 バイデン氏がつまずいた6月末のテレビ討論会後に米CNNテレビが実施した世論調査では、ハリス氏とトランプ氏が対決した場合の支持率はハリス氏が45%、トランプ氏が47%で拮抗(きっこう)。  政党支持なし層や民主、共和両党の中道派の支持率はハリス氏がトランプ氏を上回り、バイデン氏に代わって「戦える候補者」として党内で待望論が出ていた。  一方のハリス氏は、バイデン氏に対する撤退圧力が強まった後も、「討論会での90分間のパフォーマンスが、大統領の功績より重視されることがあってはならない」と主張し、忠誠心を見せた。

バイデン氏(2020年2月)

 バイデン氏は撤退を決断した声明で「20年の大統領候補として、私の最初の決断はハリス氏を副大統領候補に指名することで、それは最良の決断だった」と信頼感を示した。

◆投票なき選出は反発招く恐れ

 バイデン氏がハリス氏を推薦したのは、大統領選までの準備期間が短く、「伴走者」としてバイデン陣営の選挙組織と資金を円滑に引き継げる点も考慮したとみられる。  ただ、投票プロセスに欠けた「後継指名」は反発を招くおそれもあり、党全国委員会のハリソン委員長は声明で「透明で秩序あるプロセスをとる」と約束した。(ワシントン・鈴木龍司) 

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